2023.7.23. 『君たちはどう生きるか』

よく晴れている。

今日は川崎まで宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』を観にいくつもり。午前中のうちに二人ででかけた。
パン屋さんのイートインで昼飯は軽く済ませて映画館。結構混んでるなぁ。開場時間だったので着席すると、次から次へとお客が入ってくる。ここのシネコンで最大級の箱が満席になっていた(!)。大人気。

で、映画。まだ公開されて間もない作品だからネタバレしてもねぇ・・・。ま、つべで検索すればネタバレ全開の解説動画も結構あるから書かなくても意味ないんだけどね。

冒頭のシーンからすごい。戦時中。主人公の男の子が寝室で寝ていると、外が騒がしい。病院が燃えている、という声。どうやらそこは主人公の母親が入院している病院らしい。父親は現場へ急いだ。主人公も後を追った・・・。
一年後。主人公は疎開する。降り立った駅に迎えに来たのは父親の新しい奥さん。車夫の運転するクルマ(自転車で曳く)でお屋敷まで。主人公の継母となる人は妊娠していた。
お屋敷の中に入ると使用人のお婆さんたちが父親のトランクに群がっている。中には缶詰などの食料が入っていた。相当裕福らしい。父親は戦闘機のフードを制作する会社を経営しているらしい。
夜遅くに帰ってきた父親を迎える継母。その様子を覗き見る主人公。母親は忘れ去られているようで、主人公は継母もこの家も好きじゃなかった(と思う)。
庭の池にアオサギが一羽佇んでいる。と思ったら屋敷の方に向って飛んでくる。主人公を掠めて飛び、茂みの向こう側に埋もれるようにして建つ建物にとまった。大叔父と呼ばれる人が建てて今は廃墟となっている。大叔父は「本を読みすぎた人」だったそうだ。
不穏。絵も登場人物たちの表情も、流れている音楽も、みんな不穏だ。

・・・このあたりから物語のファンタジー化が加速していく・・・。
いや、お屋敷が見えたときからおかしいな、と思ったのよ。油屋っぽい佇まい。中には7人の小人がいるし。で、唯一の宣材に描かれていたアオサギが出てくれば、これはもう確定(!)。

お話はこの後観念的になっていく。終わってみればテーマは主人公の成長物語にもなるんだけど、主人公は宮崎駿監督ご自身がモデルだから、どういう気持ちで描いたのかなぁ。
父親に対して抱く反発心と嫌悪感。その一方で主人公の母親に対する執着がとても強い。それは宮崎駿監督作で必ず登場する「お婆さん」役の存在からもわかりやすいが、今回はとうとう「若い姿」の母親を登場させて主人公と一緒に行動させるというファンタジーな場面を描いていた。これずっとやりたかったんだろうなぁ・・・。
主人公が嫌っていた継母。その継母もまた主人公を嫌っていた。ある時、継母は茂みの中へ消えて行った。
(略)
大叔父の作り上げた「世界」。そこを守るのかどうか。主人公は選択を迫られる。・・・このあたりがクライマックス・・・。「世界」は崩れ始め、中に居た登場人物たちはおのおのの居た場所へ戻らなければいけなくなる。その時、母親は躊躇なく”主人公を身ごもるため”に元の場所へ戻っていく。その後に病院で火事に遭う運命を知っていても。

登場人物が今回も多彩。アオサギ。ペリカン。そしてインコ(大群)。あと白くて丸いの。ほか、過去作で観たことのあるようなシチュエーションや場面がそこかしこ。そのあたりがくすぐりになって観ていて飽きない。
大叔父(宮崎駿自身)が作り上げた「世界」が最後に壊れてしまうが、これは作家としての宮崎駿の宣言なのかもしれない。今までの世界を壊してまた新作を作り続けるよ、という。
面白かったね。

帰りの電車では女房と二人で映画のことをずっと話していた(小声で)。
6396歩 4.4km 276kcal 21.1g

腰越駅前
ZEISS IKON S310 TESSAR40mmF2.8
2023年07月23日 | Posted in 甘露日記 | | Comments Closed 

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