くもり空。
朝飯を食べながら、録画してもらった中原中也TV。語り手は町田康氏。中也を悩ませた女性、長谷川泰子さんについて。
京都に居たころ、広島出身の女性、女優志望の長谷川泰子さんに中也は出会う。中也の詩が好きだという。所属していた劇団がなくなり、途方に暮れていた彼女を中也は下宿に誘った。泰子さんは親切で呼んでくれたと思っていた。ところが男女の関係になってしまい困惑した、と話した。
東京へ出て早稲田大予科受験のために下宿する。近所には東京帝国大学の学生だった小林秀雄が住んでいた。語り手の町田氏は当時中也が住んでいた下宿のあった場所へ足を運ぶ。混み入った住宅街。数年前まで古い建物が建っていたその場所は駐車場になっており、わずかに石垣の痕跡と切り株だけがあった。
下宿先で泰子さんは中也にほっておかれていた。次第に近所に住んでいて優しく接してくれる小林秀雄に好意を持つようになる。ある日、決然と小林さんの所へ行きます、と中也に告げて下宿を出た。中也は「そうか」とだけ言ったらしい。
だが、内心はもちろん穏やかであるはずがなかった。「捨てられた」「大東京で独り」「口惜しい」という言葉や、小林秀雄を指して「敵」と書いた。ここでも中也は自分にとって大事な存在を「喪失」する。
後に、泰子さんは小林秀雄からも去って、映画女優となった。今よりもずっと女性の生き方の狭かった時代に、女優を目指すというのは並大抵の決意ではなかっただろう。そういう存在の大きい女性と触れ合えた中也と小林秀雄には大きな文学的経験が残ったはずだ。
番組の最後には録音された泰子さんの肉声が流れる。中也の詩を読むと私涙が出てくるんです。と語っていた。泰子さんは中也の詩が大好きだったのだ。
後に中也の作品が後世に残るものとなったためにこういうエピソードがとても文学的なものとして解説されるが、若者なら誰が経験してもおかしくない出来事だったかもしれない。中也はこのとき18歳である。だが、やはり、彼は詩人だった。この出来事は、人は徹底的に独りだ、という想いとともに後の詩作にも大きな影響を与えたはずだ。
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8043歩 4.82km 57分 467.5kcal 17.6g

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