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■ローライ35の分解図と概観

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   ローライ35は、筆者が一番好きなカメラである。詳しい資料はあまり無いのだが、アサヒカメラのニューフェース診断室に分析記事があるので、その中から一部を紹介したい。1967年8月号。ドクターは機械試験所 土井康弘、カメラ修理家 貫井提吉、東大教授 小穴純、写真家 木村伊兵衛の4人。

 

絞りリング@を回すと、これと直結した絞りカムAが回り、Bを介して絞りレバーCを動かす。ASA感度リングDを回すと、二重軸Eを通してカムFが動くが、普通は絞りリング@とASA感度リングDは、摩擦結合により一体となりFを回す。シャッター速度リングGの回転は、HによってレバーIに伝えられる。支点Jの位置、したがってレバーKの傾きは、ASA感度、絞り、シャッター速度によって決まる。レバーKはアームLにより、追跡指針Mを動かし、メーター針にMを合わせることが出来る。

連動露出計付き35mmカメラ(フルサイズ)
テッサー40mmF3.5(3群4枚)レンズ付
特殊型コンパー(B・2〜500 X接点付)シャッター
前玉繰出し目測式焦点調節
アルバダ式ブライト・フレーム入り(倍率約0.75倍)ファインダー
CdSセル追跡指針式露出計内蔵、作動範囲EV5〜18
準備角なし、巻き上げ角約225度一回操作レバー
横幅99X高さ68X奥行25mm 重さ382g
69,000円

外観 1966年秋のフォトキナに突如出品されたローライ35は世界最小の35mm判カメラとして各国のカメラ関係者の注目を集めた。フォトキナの報告で、だいたいの予想はしていたものの、実際に手にとって見ると、聞きしにまさる小型カメラで、国産のハーフ判カメラよりも小さくて軽い。でっぱりの多い部品はすべて底面にまとめて配置しており、このカメラを軽快に見せようとする、設計者の意図がうかがわれる。

ファインダー ファインダーをのぞくと、ピンク色の視野中に白いブライト・フレームが浮かんで見える。光学系は前面ハーフ・ミラーのアルバダで、全部がガラスブロックで埋められており、フレームは暗い場所でもはっきり見える。ファインダー倍率は約0.75倍と大きく、画像に歪曲の少ないのも良い。視度は、ファインダー像が遠方に見えるようになっていて、国産カメラの多くが11.5mあたりに見えるようにしているのとは違っている。接眼窓は大きく、眼鏡をかけたままでものぞきやすい。

距離目盛の精度 ピント合せは前玉繰出しの目測式で、鏡胴最先端に焦点調節リングが付いている。距離目盛(0.9m〜無限遠)に対向する指標の両側の狭いスペースには、深度目盛が刻まれている。距離目盛のうち、2mと6mの数字は赤字で書かれ、常焦点式のスナップ撮影に便利なようになっている。説明書によると、絞りをF8とF11の間にセットした場合、2mに合わせると1.53m、6mだと3m〜無限遠の範囲にピントが合うという。

フィルム巻取り、巻戻し機構 フィルムの巻取りは、準備角なし、巻上げ角約225度の一操作式レバーで行う。レバーは薄手の板をプレスしたもので巻上げ角はたいへん大きく、しかも普通のカメラと違って左手で操作するようになっているため、ちょっと考えると巻きにくそうだが、事実はそれに反してなかなか巻きよく、巻上げの感触もスムーズである。また、左側レバーはシャッター・ボタンに指をかけっぱなしで連続撮影をするときなど、具合が良い。フィルム巻戻しは、接眼窓の右側にあるレバーをRと書かれた方向に180度回してから、ボデー底面の巻戻し用大型クランクを起こして行う。

連動露出計の構造と精度 このカメラの連動露出計はCdSセル使用の追跡指針式で、連動範囲はASA100のフィルムの場合にEV5から18まで、また使用できるフィルムはASA251600である。

この連動露出計を使うには、まず、ボデー前面向かって左側のダイヤル中央にある、フィルム感度セット盤を指の腹で回して、指標を使用フィルムの感度数字に合わせ、つぎに右側のシャッターダイヤルを回して適当なシャッター速度をセットする。こうしておいてから、カメラを正しく被写体に向け、絞りダイヤル下方のクリック解除爪を押しながらこの絞りダイヤルを回して、ファインダーカバー上面にあるメーター窓内で、赤い追跡指針を黒いメーター指針に重ねれば、この操作によって適正絞りが得られる。つまり、シャッター速度先決式である。

露出計の連動原理は、純然たる機械方式でメーター指針の方は他の条件に関係なく、被写体の明暗だけに応じて振れているのに対し、追跡指針の方は、絞りダイヤル、フィルム感度盤、それにシャッター速度ダイヤルのそれぞれの動きがリンク機構によって適当に合成され、これによって動かされるようになっている。つまりこの三者のどれを動かしても追跡指針がメーター指針と重なったときに適正露出の条件が得られるというわけだ。

この露出計の連動精度を、いつもと同じ測定装置で測ったところ、バラツキは最大1/4絞りで、大変良好である。また露出レベルも適当で、カラー・リバーサルフィルムで美しいスライドが得られた。とくに逆光撮影でもよい結果が得られたというのは、ボデー前面の受光窓が小さく、CdSセルがこの窓から相当離れた位置に置いてあり、したがってセルの受光角がかなり狭いためと思われる。

内部の諸構造 ボデーは、ファインダー光学系、フィルム巻取り、巻戻し機構、CdSセルとメーター等を組み込んだボデー本体と、レンズ鏡胴、シャッター機構、露出計連動機構をまとめた前板との二部分から成り立っている。ボデーダイカストは肉も薄く、肉抜きも上手に行われ、はっきりいって国産カメラのダイカストよりも数段良いできである。上下カバーとボデーの組み合わせはしっくりできており、カバーのプレス技術もすばらしい。ナシ地クロームメッキは質が堅くて品の良い仕上げである。カバーの裏側は全部黒色塗装されている。革張り部分はローライ特有の人造革で、シボも適当に荒くて手が滑らない。ボデーの内面反射は、上質の黒色塗料を塗ったり、細かいヒダを持つ防止壁を設けたりして防止に努めているのだが、レンズ鏡胴を出し入れするためのガイドレールが1本ずつ、天井と床とに出ているため、画面外の強い光がここに当たると大きな反射を起こす。レールの表面の形にもう一工夫あって然るべきだろう。

シャッターはレンズシャッターで、デッケル社製のコンパーだが、普通のコンパーとは大変違い、デッケル社が特にこのカメラの為に開発した特殊型である。絞り羽根とシャッター羽根だけを沈鏡胴の内部に残し、その他一切の機構を大型のレンズ前板裏面に分散配置して、この前板をはじめからボデー内に埋めるという構造を採用したため、細型のレンズ鏡胴は、何ら妨害を受けること無く、ほとんど全身をボデー内に沈めることが出来るようになった。つまり、シャッター部分の厚みが、フォーカルプレン式と同様に実質的にゼロとなったわけである。ただし鏡胴を沈めた状態では、シャッター羽根と駆動機構との縁が切れるため、シャッターは働かない。このことはレンズが正規の状態にないときの撮影を防止する安全機構として役立っている。またシャッターを仕掛けた状態でないと、鏡胴を出し入れすることは出来ない。

超小型ボデーであるにも関わらず、露出計のメーターはじめギア、レバーなどの各部品には大型のものがのびのびと使われていて、少しもせせこましい感じがしない。これは内部スペースを無駄なく利用しているからで、各機構の耐久性も大きいと思われる。

レンズまわり レンズは西独ツアイス製のテッサー40mmF3.5で、3群4枚構成のテッサー型。画角は公称57度の準広角で、最短撮影距離は90cm。

前玉繰出式のレンズだから、すべての性能が前玉の位置によって変わるので、撮影距離目盛りを3mのところにセットしてテストを行った。この状態における焦点距離と明るさの実測値は39.9mmF3.59で問題はない。F8に絞ったときの焦点移動量は0.06mm(アトピン)で、まずテッサー型の相場どおりといえる。放射同心両像面は半画角23度へんで交わらせており、それより外側ではかなり大きく開いていて、画面スミ部の画質の低下を示唆している。この点、ならびに平均像面がやや内側に湾曲している点など、すべて標準型テッサーといえよう。

歪曲は画面スミ部でマイナス1.2%の樽型。これは実用上差し支えない。画面周辺部にいくにつれて光量が減る割合を示す開口効率は、画面対角線90%の位置で67%。これはすばらしく大きくて良い値である。解像力は両像面の開きの大きい画面ヘリ部では低いが、絞ればかなり向上する。

鏡胴は沈胴式で、その外面のクロームメッキは非常に堅くてキズがつきにくく、逸品といえるほどの良い出来である。距離目盛や深度目盛は、ボデー側の絞り目盛やシャッター速度目盛をも含めて、すべて上から楽に読めるようになっているのは大変良い。

結論 山椒は小粒でもピリリと辛いといった感じのするカメラである。フルサイズの35mm判カメラでありながら国産ハーフ判カメラよりも小さくて軽いという特色は、一面において撮影時のカメラ保持をいくらか不確実にしているという短所を伴うが、なんといっても常時かばんやハンドバックの中に携帯するには絶好のカメラといえよう。比較的大柄な内部部品を無駄無く小さなスペースに収めた手際も見事である。この成功に対するシャッターメーカーの寄与も高く評価されるべきだろう。

ただ、ファインダー視野の比率が非常に小さいとか、ボデーの内面反射が大きいとかいう欠点が散見されるのは残念なことで、今後これらを改良し、35mm判カメラに一つのジャンルを打ち立てることを希望したい。それにしても、我が国の現状から見ると、この種の性能を持つ国産カメラの価格を比べるといかにも割高であり、たしかにひとつは持っていてよいカメラではあるが、そういう希望をかなえられる人が果たして何人いるだろうか。

 一読して得られる感想は二つ。一つはまだ「コンパクトカメラ」という概念すらない時代に、35mmフルサイズでこの小ささを実現したカメラに対する惜しみない賛辞が述べられていること。もう一つは、この記事と比して、24年後のローライ35クラシックが発売になったときのニューフェース診断室での評価が芳しくなかったこと、である。ほとんど設計を変えずにリニューアルされて出たこの「クラシック」は「時代遅れの使いにくいカメラ」と一蹴されている。ほぼ同じ機能と大きさを持つカメラが、時代が経たことによって与えられる評価に違いが出ている。四半世紀のカメラの進化を思うべきか、人間の贅沢による堕落を心配するべきか。


 

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