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番外編 多摩川でフライ

HOME > KANROKANRO > BASS > 1999年9月その2

 8月とは違い、9月はバス釣りに行ける回数がグンと減った。カレンダーを眺めてみると、結局12日の亀山湖釣行以外には出掛けられないことがわかった。つまり、9月はもうバス釣りには行けないのである。しかし、そんな時でも、ワタシには多摩川がある。バスのポイントとしても有名な丸子橋も歩いて15分の距離だ。ただ、多摩川でバスを釣り上げた人をワタシは見ていない。バスを無理して狙わなくてもフライを投げれば何かがかかるのが多摩川の懐の深いところ。今回は多摩川でフライを投げてみることにした。

 フライ用のロッドとリールのセットを7月に上州屋で購入してから、8月はバス釣り三昧で活用することもなく過ごした。9月に入り、バス釣りに行けないとなるや、急に多摩川へ行きたくなってしまった。1999年9月21日の朝、4時半に起床。まだ外は真っ暗だ。すぐに支度をし、出発した。多摩川へ釣行する時にはほとんど早朝が多い。そんな時、東口駅前のam/pmは、朝飯の調達場所だ。おにぎり二個と500mmの水。これを買い込み、店を出た。

 だいたい歩いて15分で丸子橋下へ到着する。今日も真っ暗な中、だれか先行者が居た。スピニングリールを持っていればバスを釣りに来た人だが、バスは本当にここで釣れるのだろうか。暗くてわからなかった。さて、ワタシは丸子橋下ではやらず、それよりも少し上流、流れ込みの少し下あたりで釣りをする。

 フライタックルは、フライリールに巻かれたフライラインというビニールコーテッドの太い黄色か橙色のラインにテーパードリーダーという根元がフライライン並みに太くて先にいくほど細くなっている道糸を結び、その先にティペットといわれるハリスを繋いで、それにフライを付ける。バスのタックルとは違い、先におもりがない。これはフライラインの重みでリーダーから先の軽い仕掛けを飛ばすシステムになっているからである。ちなみにリールはバス釣りとちがい、キャストを繰り返している最中にはほとんど手を触れることもない。ただ不要なラインが巻いてある存在でしかない。魚がヒットしたあと、取り込むためにリールでラインを巻き上げるが、ギヤ比は1:1であり、いってみれば本当にただの糸巻きだ。普通のリールの1:5.3のようなメカメカした機構が組み込まれておらず、マグネットブレーキも遠心ブレーキも内蔵されていない。ワタシのABUが25,000円未満で、フライリールに3万円以上の値段がついているものがあることが俄かに信じがたい気分だ。

 フライマンのキャスティングは傍で見ていてもかっこいい。うまい人ほど振り上げる腕の動きは小さくなり、手首のスナップを利かせてロッドからラインへ力を伝える。力でラインを飛ばそうとすると失敗する。要はタイミングなのだ。うまい人のキャストを支える組み合わせ、ロッドの長さ、ラインの重さ、など、計算された組み合わせがきっとあるに違いないが、それは長年の経験から生み出されたものであり、ワタシのような始めたばかりの者には経験を積む以外に仕方がない。同じ道具を揃えたところで同じようなキャストが出来るわけがないのだ。手首のスナップを利かせて軽く振り出されたラインはピッとまっすぐに飛んでいき、着水するかしないかの瞬間にリーダー・ティペット部がすぅっと前へ倒れるようにして着水し、その一切がよれない。ラインは水に浮き、リーダーから先はドライフライでない場合は水中に沈んでいく。初心者のミヨウミマネでタイミングを考えず大きく腕を振り出して飛ばすと、ロッドからラインへ力がうまく伝わらず、距離が出ないばかりか、着水する前にラインはよれてしまい、最悪の場合はリーダーから先がこんがらがる。こんなことを何度も経験し、キャステイングは腕をただ大きく振ればいいということではない、ということが、この数ヶ月のフライ経験でわかった。

 さて、まだ少し暗い朝5時過ぎ。キャストを開始。目の前ではいろいろな魚がうようよしている。それが朝マズメの水面が騒がしいことでもわかる。だいたいここではフライでコイ、フナ、ボラが釣れるのだ。今日は平日だけにへら師のおじさんもいないようだ。ぴちゃぴちゃと水面が波立っている場所へフライが流れて入っていく。あたるならそろそろか?と構えるがなかなかそううまく食ってくれない。減水して流れがほとんどない状態とはいえ、少しづつ流されていってしまうため、適当な頃合を見て再キャスト。この時、バス釣りと違ってリールで巻き上げないでもキャストできるところがフライの手返しがいいところだ。

 キャストして流されてはまたキャスト。これを何度か繰り返すうちにコツっというあたり。ロッドをあおるとラインが水から跳ね上がり、びーーーーーーっと音を出す。次の瞬間、ぐぐぐぐんっと生き物の感触。あたった!この瞬間は何度味わっても良い。しかし、あまり引きが強くない。ロッドのしなりもいつもほどはない。コイならかかるなり綱引きが始まるのだが…。リールでラインを巻き上げ、上げてみるとフナであった。計ると36cm。バスで36cmなら結構強い引きで引き上げるのに苦労するところだが、フナはあまり抵抗しなかった。顔もどこかやさしげであり、バスの強い顔とは全然違った。時に5時半過ぎ。朝日が登りかけた頃だった。

 多摩川フナ36cm

 結構早いうちに釣れた。普段の多摩川は3時間釣りをしてボーズも珍しくないのだが…。ラインをまた出しながらキャスト。一度リールに収まってしまったラインを引き出すのは結構面倒な作業だ。人によってはリールで巻き取らず、手でラインを手繰って引き上げてしまう人もいるようだが、まさか50アップのコイでは手の皮が持たないだろう。

 うまくキャストできた、と思えるようなところまで遠くに飛ぶことがだんだん増えてくる。魚のほうも近くにいるものは警戒して口を使ってくれない。つまり、釣れない。だから、魚からも見えないほど少し離れたところにフライを飛ばす必要がある。またヒット!さっきのようにコツっときた。ん?!ということは…?この少し弱々しい引きは…?と思いながら引き寄せるとやはりフナであった。計ってみると40cm。そうかぁ、40cmといってもバスとはやっぱり違うなぁ。5時55分。平日だけにまわりには人影もまだまばらだった。

 サイズアップ!40cm

 立て続けに2匹。やはり平日の法則か、プレッシャーが低いからワタシのようなシロートのフライにも食いついてくる。あと何匹釣れるだろう。…しかし、その後は音無し。何度キャストしてもかからない。たまに口に入れるまではしてくれる魚もいたが、合わせきれずにバラシ。場所を変えてみよう。

 流れ込みを背にして下流へキャスト。やはり水面でばしゃばしゃやっている魚が見える。ここには何がいるのだろうか。ん!!かかった!ロッドをあおるとフッキングしたようだ。今度は引きが強い!あまりすぐに釣り上げようとするとフックが伸びたりラインティペットやリーダーの部分で切れたりするから、リールをフリーにして少し泳がせる。最初はぎゅぎゅーっと力任せに引っ張り込もうとする魚もだんだん疲れて巻き上げにも抵抗しなくなってくる。そこがランディングのチャンスだ。巻き上げ、放しを繰り返しながら5分くらい泳がせるたあと、寄せるとなんとボラであった。軽く50cm以上はある魚だ。むむ!最後の抵抗。フックをはずすからおとなしくしろー!プツン!あれ?またラインが切れた??んんー、確かにリーダーの部分で切れている。傷があったのだろうか…。

 これで運も切れたのか、あたりはあるものの、乗らず。8時過ぎ、子供の幼稚園の登園時間が近づいた。今日は平日である。店だって開けなければならない。さ、帰りましょ。とさっさと多摩川を後にした。

1999年9月記


 
 

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