また釣れなかった。やはりくやしい。睡眠時間を削り、結構な交通費を掛けて釣行しているのに結果がでないのでは自分的に納得できない。こうなってしまうと意地でも釣りたい。どうしても釣りたい。一度ここまで思ってしまうと引っ込みがつかない。仕方なく次の週も単独で亀山へ行く事に決めてしまった。
とはいうものの、二週間連続で休みの日に家族を家へ置きっぱなしにする事は出来ない。どうしようか、と考えたもののあまりよい考えは浮かばない。「やっぱりわたしの間が持たないから、わたしは行かないからね」と女房には釘をさされ、亀山湖へ家族を一緒に連れて行くわけにはいかなかった。
そこで、御蛇ケ池そばにある女房の親の家へ家族3人をあずけ、夕方迎えに行く、ということにし、一人で釣行する事とした。5月のゴールデンウィーク中に行ったのに、「また来たの?」と言われそうだ。やはりこれもまだ無理がある…。
しかし背に腹は変えられない。そのやり方で行く事にした。今度は絶対に釣りたい。とりあえず先週の亀山釣行のときノーシンカーでバイトを連発したHIDEさんのやり方を真似てでも一匹は釣る覚悟をした。そうなるとノーシンカーで投げやすいロッドが急に欲しくなった。カタログをめくる。といってもあるのはSIMANOのものだけだ。自然にスコーピオンに目が行く。ライトリグはスピニングで投げるのが常識となっているらしいが、先週せっかくカルカッタを購入し、ベイト熱が起こってきているところである。スピニング用のロッドを買ってしまうと、組み合わせがちぐはぐになってしまう。ええい、いいやっ。とベイト用スコーピオンを買う事に決めた。ナンバーは1602R−2。きっとベイトでノーシンカーなんて、その方がよっぽどちぐはぐだ、と言われるだろう。でも試してみなければわからない。失敗したら仕掛けを変えればいいだけの事だ。誰に向ってかわからぬものの、一人そんな言い訳を考えながら上州屋へと向った。
5月30日朝4時20分過ぎ。快晴の空。前よりもずっと日の出が早くなっている。今日も日焼けしそうだな、と思いながら、のむらボートさんの駐車場でスコーピオンにカルカッタを付けてオカッパリの用意をした。バス釣りを始めてたったひと月と少し。とうとう亀山湖まで一人で来てしまった。
ベイトでノーシンカー。知っている人なら「アホか?」と一蹴する組み合わせ。周りの人がボートで出船する用意をしている中、坂を下りて通称「まどか岬」へと向う。このあたりは大きくまわっている反対側のメインチャンネルに対して広くシャローが広がっており、朝夕はバスの捕食場所になっているようだ。まわりには誰もいない。例の四角く囲った手すりを乗り越え、いよいよ釣り開始。
カルカッタにはノーシンカー用にフロロの4Ibラインを巻いてある。その先にはロボワームの4インチストレート、パープルウィニー色を付けた。やはり軽い。ちゃんと投げられるか心配になった。一投目。クラッチを切り、サイドハンドでビューッと投げる。ああっ。左へ飛んだ…。スプールから親指を離すタイミングが遅かったのか、狙った方向から90度以上左へそれた。やっぱりアホのすることなのか。でも、納得がいくまで投げてみよう。二投、三投。だんだんタイミングがわかってきた。思った場所へまっすぐ飛ぶようになりつつある。でも飛距離は伸びない。それにしてもこのワーム、水中にいるときにはホントに魚みたいに見えるなぁ。
あれこれと考えながら投げていると、後から二人、ロッドを持った人が手すりを乗り越えてきた。せっかく一人で投げていたのになぁ。と思ってみていると、その人の投げたルアーがバスベイト。TOPかあ。そうだよね。普通この時間ならTOPを投げるでしょ。びびびび…と早巻きで2,3度連続して引いている。なかなかカッコいいし、気持ちよさそうだ。一日のルアーローテーション。それを意識できるくらいの心の余裕があったらワタシももっと釣る事ができるかもしれない…。
と、10投くらいしたあとだったろうか。突然「ぐんっ」と引っ張られた。あ。かかった!ぐいぐい。よっしゃぁ、とリールを巻く手も力強い。少し横に走ったものの、すぐに上がってきた。フックはバスの左くちびるに引っかかっている。よし、思った通りのパターンだ。持ち上げてみるとビビビッと少し暴れた。釣れたという実感にしばし酔いしれた。TOPをやっていた二人はなぜかすごすごと「ボート行こうぜ」とほんの10投もしないうちにその場を去った。なんでかな?悔しかったかな?うひひ。やはりうれしい。写真を撮らなきゃ、写真。へ?…あーっ。カメラを車に置いてきてしまった…。ううう、どうしよう。とりあえず長さを測ろう…。25cm。数字にしてしまうとぜんぜん大きくない。このバスを持って車まで歩くのもスマートじゃないなぁ…。今思えばそんな見栄を張る事はなかった。「この分ならボートに乗ってからだって釣れるからいいやっ」とリリースしてしまった。
時間は5時少し前。切りがいいからボートに乗りに行く事にした。
ボートに乗って一番に行ったのは、のむらボートから見て亀山大橋を少し過ぎた通称「竹やぶ下」というポイント。ここでは常吉を投げた人が立て続けに3匹ヒットした場面を前に見た事があった。今日は朝一でそのポイントに入る事が出来て、かなり期待ができた。しかし、ノーシンカーや常吉で先ほどのロボワームの4インチストレートを投げ込むものの、アタリがない。張り出している枝ぎりぎりに投げ入れるものの、駄目。5,6投くらいしたところで枝に引っ掛かった。えいやっと、引っ張ると思ったよりも浅く引っかかっていただけのようで、びゅんっと仕掛けが顔をかすめた。オオあぶねぇ。まったく攻めにくいポイントだなぁ、とギュルギュル早巻き上げをしていると、またしても魚影が付いていた。あーっと気がついたときには、もうワームは水面から離れていた。おしい…。またしても釣り損ねてしまった。じりじり狙っているときにはぜんぜん反応せず、こんなルアー回収作業中に当たってくるなんて、馬鹿にされているなぁ。
また釣れるかも、との期待をいつも持ちながらこの後いろいろがんばったが、ボートに乗っている間は全くバイトもないので、結局早めにボートを降り、またオカッパリをする事にした。どうもボートとの相性が悪いような印象を持ってしまった。
午後4時過ぎ。日曜日だけに家族連れで釣りをしている人も多い。ワタシが朝一番にバスを釣った場所にはへら竿に丸ウキの仕掛けでバスの餌釣りに興じる親子がおり、さっきから何度も釣り上げている。バスって餌ならこんなにも釣れる魚なのか。まるで何にも考えていない魚に思える。10分に一度くらいはアタリがあるようで、子供は素直に楽しそうだし、親はしてやったりのニタニタ顔だ。うーむ、くやしい。
その隣りでまたもワンパターンにノーシンカーを投げつづけるワタシ。本物の餌にかなうわけもなく、ただただ苦い思いをした。そろそろ帰るか、とその親子は帰ったものの、残ったほかの悪ガキたちがドボンドボンとポイントに石を投げ込み出した。うぬぬ、こんな状況じゃ釣れるわけがない。早くアイツら帰らないかなぁ。長い長い時間がゆっくりと過ぎて行く。
5時すぎ。そろそろ家族を迎えに行かなければならない。しかし、ここからが夕方マズメ時のゴールデンタイム。悪ガキたちもやっと帰ってくれた。あたりではバスがボイルを盛んに行っている。うーん、釣りたい。こんなに気配があるのなら一匹くらいかかっても不思議はない。しかし、その不思議がこんな時に限って起こった。まわりにはこの状況なら絶対釣れる、と思っているからか、ウエーダーで立ち込んでいる人も含めてほかにも10人くらいいた。しかしその中の誰一人として釣り上げていない。
絶対釣る!と思いながらも5時半がリミット。結局朝一番に釣り上げた25cmが今日の釣果となった。釣れたのに釣れなかったかのような後味。ボーズではないものの、写真がないために2週連続ボーズになってしまったような気分で亀山湖を後にした。シブいぞ亀山!
1999年5月記

