御蛇ケ池ボーズ

HOME > KANROKANRO > BASS > 1999年5月その2

 199955日。ゴールデンウィークの最終日である。ワタシはまたも朝4時半に車を車庫から出し、首都高を千葉方面へとひた走っていた。今日は待ちに待った御蛇ケ池釣行の日なのだ。52日の多摩川釣行で、例の安物スピニングロッドが柔らかすぎて自分に合わない、と感じたため、先日上州屋でベイトロッドと同じダイワのトライフォースのスピニングタイプを買ってしまっていた。今日はそのロッドの初日である。ベイトとスピニングともそれなりのロッドを揃えられ、釣り場情報にも載っている釣り場へ向っているということで、期待は高まっていた。

 朝から雨。まだ暗い空から降ってきた雨粒がフロントガラスを叩く。雨の中を釣りするなんて、すこし前なら考えられなかった事だ。「バカやってるなぁ」と自分でも思う。しかし、気持ちはノッていた。早起きも苦にならなくなったし、雨降りという天気もどこか常軌を逸しているようで逆に気持ちを昂ぶらせているようだ。

 湾岸線を宮野木ジャンクションで京葉道に乗り換え、千葉東金道路に入る頃にはすっかり夜は明けていた。山田インターで降りてしばらく走り、信号を右折すると急にあたりは田園風景となり、ほどなく御蛇ケ池へと到着した。時に5時半。無料の駐車場は半分くらい埋まっており、RV車で来ている人がロッドの準備をしていた。自分も早く準備しよう。コンビニで買った400円くらいの雨かっぱを着込み、ロッドを組んでラインを通し、仕掛けはスピニングには雑誌で見た常吉リグに常吉ワームを付けてみた。ベイトにはスピナベ。雨は強くなったり弱くなったり。この池は人工池で、堰の下に駐車場がある。堰を上ると雨にけむる御蛇ケ池が広がっていた。高速を降りてすぐにこんな風景の場所があるとは驚きで、どこか山上湖のような雰囲気を持っている。雨の中バス釣りと思われるボートがすでにたくさん出ていた。ボートか、乗ってしまおうかな。

 ボート屋さんは堰の切れたところにあり、駐車場から200mくらい離れている。そのあいだがすべて御蛇ケ池を堰きとめている「堰」である。ボート屋は「つかもと」といった。いつもだと1日で2,700円。入漁料は無料。ただし、今日はゴールデンウィークなので、半日(2時まで)でこの値段です、と言われた。ワタシは今日の昼過ぎにこのそばの中野へ家族を迎えに行く予定だったので、ちょうど良いといえばちょうど良かった。料金を支払うと、店のおじさんに「ウィードが池一面にいっぱい茂っていますから、ワームはノーシンカーで。色は黒っぽいのが当たってますよ」とアドバイスされた。ノーシンカー?オモリを付けないって事か?それではワームが沈まないじゃないか。どうやってバスは食いついてくるのか。その場では頭の中で整理が付かず、「ああ、そうですか」と曖昧な受け答えになってしまった。

 いざボートを出してみると、おじさんの言っていた「ウィードが池一面に」というのはすぐに分かった。水はクリアで比較的浅い場所なら底まで見える。覗き込むまでもなく、水面から顔を出しているものさえあり、まさにビッシリとウィードが生えている状況だ。バスの本に「ウィードはポイントだ」と記述があったが、それは部分的にウィードがある場合にはバスが付いている、というニュアンスだったはず。全体がウィードに覆われている場合どうしたらいいのかはわからない。おじさんの言っていたノーシンカーという言葉が再び頭をよぎる。だからといって、なにも思い付かなかった。

 仕方なく、わかる範囲で釣りをする事にした。ボート場を出てすぐのワンドで常吉を投げる。岸の際に投げる。反応なし。スピナベをウィードに絡まないような深さで引いてくる。反応なし。えいっと気合を入れて投げる。あっ。木に絡まってしまった。回収をしなければ。回収をしに岸際へ行くと、ウィードの穴(藻穴)でブルーギルがじっとしている姿が見えた。なんだ居るのか。と思い、覗き込みながら常吉を目の前にちらつかせた。やっぱり反応なし。見えバスは釣れないという原則があると聞いていたが、確かにこちらから見えるということは魚だってこっちを見ているはずだ。あやしいと思わないわけがない。意地になってしばらくその場所で無意味な行動を繰り返したが、無意味な時間を浪費しただけだった。

 そういえば、さっきから雨があがっていた。池の水面が平らで底が見えやすかったのはその為だ。もう降らないのだろうか、と思いながら、ボートを向って右側の水門前というポイントへ進めようとした。やはり誰でもわかるポイントだからだろう、すでにオカッパリの先行者がいた。少年バサーである。この間の多摩川でも思い知ったが、少年の方がお金を掛けられないだけ自分の足を使って工夫をする。そして大人よりもセケンテイを気にする事が無い為か、多少の無理も通す。そんなところが認められるのか、釣果もそこそこ上がっているような気がする。

 この池は護岸工事されているのは堰の部分だけで、あとは自然のままである。オカッパリには少々つらい。オカッパリ少年にとっては数少ないポイントであろう水門前にボートで踏み込んで行く、というのはちょっとためらわれた。結局その場所をあきらめ、少年バサーに譲ることにした。少し離れた手前の岸際が空いていたのでそこへボートを進め、ワンド気味に少しえぐれた岸の際へ何度かキャストすると、やっぱりルアーが木に絡まった。アンカーが無いので、ボートはじわじわと動きつづけてしまい、どうも落ち着いてキャストできないのだ。ボート釣りに慣れていないという思いがそんな言い訳を言わせる。回収に行くと確かにその木にはいろいろなワームが絡まっている。プラグがないのは単価が高いのでみんな回収に来るからだろう。回収をしている間に少し離れた浅瀬でバスがバシャバシャと暴れている。居る事は居るらしいが、結局ここでもアタリなし。ゴム長靴のお化け(ウェーダーというらしい)を履いた人がさっきバスが暴れていたそばの浅瀬へずぶずぶと入って行った。腰のあたりまで浸かってからキャストを始めた。オカッパリもあれを履いてやるのならいいかもしれない、と思った。

 次にその反対側の大ヤツと呼ばれる大きなワンドへとボートを進めた。15分くらいかかってやっと大ヤツの入り口へさしかると、岸際では木のシェードを狙った釣り人が盛んにキャストを繰り返している。仕掛けはスピナベらしく、水面からあがったとき、チャリチャリといいながらきらきらと光っている。よく見ているとさすがに上手い。木を避けながらしっかり岸の際へと投げ込んでいる。あれで釣れないのではワタシが釣れるわけないなぁ、と急に弱気になった。

 風が出てきた。と思ったら雲が切れはじめた。見る見る流れて行く。ワタシの乗ったボートも風に流されて行く。大ヤツの一番奥まで流された頃にとうとう日がさしてきた。すると、牛久沼でも見慣れた葦原が姿を現した。これはひょっとすると「ここで釣れ」というオボシメシだろうか、と期待をし、スピナベと常吉を葦際に投げ込み続けた。

 大ヤツから帰るとき、風が強くてなかなかボートが進まず、苦労した。釣れているならこんなこと何の気にもならないだろうに…。時間はすでに正午を回っている。そろそろ迎えに行かなくては行けない時間になってきた。とりあえずボートを桟橋近くへ進めて時間が許すならその場所で投げようか、と考えた。

 朝、見えギルの居たあたりへ戻ると、先程とは比べものにならないほど風が強くなっていた。水面が細かくササクレ立っている。ボートを一個所にとどめておく事が出来ないので、風裏の岸際へ寄せてスピナベを投げた。たびたび風に煽られてとんでもない方向へ飛んで行く。もはや釣れるような気がしない。そろそろ1時だし、上がる事にした。

 ボートから道具を上げている途中、今日は一度も他の釣り人が釣っている場面を見ていない、という事に気が付いた。あの多摩川でさえ、釣っている場面に遭遇したのに…。バスポイント集に載っている場所でこの調子とはちょっと望みが薄いような気がした。オールを返しにボート屋さんへ寄ると、ボート屋さんの娘さんが「どうでした?」と聞くので「はあ、だめでした」と答えた。「そうですか。今日はだいたい7本くらい上がっているんですが…」と少々残念そう。確かにお客が釣ってくれなくては今後のこの池の評判に影響してしまう。その評判はボート屋さんという商売に直結してくるから、客の釣果には敏感になるのは道理だ。それにしてもあれだけのボートの数が出ていながら7本。60アップの実績がある池とはいえ、初心者にはきびしすぎる池と言わざるを得ないなぁ。

 堰の上を伝って駐車場へと向かう。朝はほとんど人が居なかった堰の上では、釣り人が2,3m置きに釣り糸を垂れていた。駐車場は満車。入り口で空き待ちの車も数台いる。それだけ突っ込む価値がある池なのだろうか、と思いながら御蛇ケ池を後にした。

 御蛇ケ池堰

1999年5月記