多摩川のバスは?

HOME > KANROKANRO > BASS > 1999年 05月その1

 1999年4月末。最初からバスは居ないと決めて始めた多摩川釣行とはいえ、ボーズはボーズ。悔しさがまったく無いわけではなかった。釣れない原因のひとつに基礎知識が不足していることがあるのではないか、ということに気が付いた。早速本屋でバス釣り関係の棚を見てみたところ、「Lure magazine6月号」という雑誌が目に止まった。表紙は船釣りからバスを今にも取り込みそうな釣り人の写真が配され、「でかバス攻略法」と大書きしている。これを一冊読んでみることにした。

 巻頭では今江克隆という人が利根川でバスを釣っていた。表紙のかっこいい写真もこの人だった。このパターン、あのパターン、ハードプラグで次々釣り上げ、大きなバスをかざす写真の表情はどれも誇らしげであり、非常にうらやましい。常に攻めて釣り上げるという方法は鯉や鮒釣りのひたすら「待つ」釣りとは正反対でスポーツ的要素が多分に含まれる。バンダナにサングラス。やはり若者の釣りというイメージは大きい。

 読んでみた第一印象は「みんな簡単におっきいのを釣ってるんだなぁ」である。この雑誌を一冊読んで、バス釣り用語のカタカナを一通り覚えることが出来た。そのなかでもスピナーベイトという妙な形をしたルアーの解説には心を動かされた。それも巻頭に登場した今江克隆氏による解説だ。スピナ−ベイトには魚の頭を模したおもりにフックが付き、それにゴムを裂いて出来たスカートが付き、フックを隠している。さらにワイヤーでつながった反対側には金属で出来た羽根が付き、これが水中でくるくると回転しながら引っ張られていくように出来ている。なぜこんな魚とは似ても似つかぬ形をしたものにバスは食いついてくるのか?リアクションバイトという聞き慣れない仕組みが作用するとある。ベイトは餌。バイトはアタリ。リアクションは反射という意味なら、反射的に思わず食ってしまうというバスの習性を利用した釣り方という意味か。ほかにも解説では「こうすれば釣れる」と次々スピナーベイトの使用方法が書いてあり、断定に弱いワタシはすっかりその形が頭に焼き付いてしまった。

 繰り返し読むうちに、仕掛けの用語、テキサスリグのほかにもスプリットショットリグダウンショットリグ、などがあることがわかり、ダウンショットリグは常吉リグと呼ばれているような事情も読めた。カタカナ続きのバス釣り用語でいきなり出てきた漢字。常吉って誰?

 仕事で神保町へ通う帰りに渋谷上州屋へ寄ることが多くなっていく。まだまだベイトタックルでの投げミスも多く、それを直している時間が惜しい。ベイトが駄目になってしまったときのフォローの為にもスピニングタックルがあった方がいいと考えた。なにか揃えておいても無駄にはなるまい。それと、雑誌を読んで頭にあったスピナ−ベイトはどんな種類があるのかを実際に見てみたい。果たして上州屋へ入ってみると、雑誌で見たあのルアーが、このワームが、いっぱい店頭に並んでいる。このあいだ何の予備知識もなく見たときとは店の品揃えさえ違っているように見える。どうもクランクベイトやミノ−はどのメーカーでも出しているようで、種類も多く、初心者には違いがわかりづらい。それと一度ワームで釣り上げてしまった経験がどうせ買うならワームと、意識がワームへと目を向けさせている。一度もバスを釣っていないのである。ここは無理をせず、ワームを見てみましょう。

 この間釣れたのはリングワームなので、これはひとつ買っておこう。あれっ、常吉っていうワームがある。これは何?このワームが常吉リグの由来かな。あ、なるほど「常」に「吉」ね、人の名前じゃなかったのか。これも買っておきましょう。お、今日はセールなのか。全品10%オフとある。ツイてる。そうそう、特価品のコーナーも見ておかなきゃ。おお、スピナ−ベイトが280円で並んでいる。となりには190円でラバージグが。2つづつ買っちゃおう。このラバージグというのが、黒いテルテル坊主のような形をしていて、スピナーベイトから金属ブレードを外して頭を黒く丸くしたような形なのだ。これまたまったく魚をイメージすることは出来ない。なんとも異形のルアーだ。これに飛びつくバスの神経はどうなっているのか、とさえ思う。最後にスピニングタックル。もともとメインはベイトにしたいと思っているし、バックアップ用としてはあまり高いのを買いたくないなぁ…。で、結局ノーメーカー製ロッドとセットで3,980円という値段が付いているリョービのスピニングリールを買った。

 結局ワームを主体に物色し、ハードプラグは敬遠してしまったが、釣れそう、と思えばどれも釣れるに違いない。この釣具店の店頭に並ぶまでには、開発元は気の遠くなるような試験を繰り返し、製品化したと思うからだ。あとはバスのいる場所へ行かなければならない。帰りに本屋でバスの釣り場がいろいろと紹介されている「ルアー&フライ完全ガイド」東日本編というムックを買い、どこにバスがいるのか、を調べることにした。

 見てみると千葉は近いのに釣り場がたくさんある。千葉東金道路の終点近くに御蛇ケ池という釣り場がある。こんどゴールデンウィークにそのそばの「中野」にある女房の実家へ子供ともども迎えに行く予定がある。そうだ、この日は朝早く出てここで釣りをしてから迎えに行けばいい。これでゴールデンウィークの楽しみがひとつ出来た。

 情報といえばインターネット。バス釣りのページがたくさんある、と聞いていたので、釣り場情報の補強をしておこう。で、御蛇ケ池を探していたらたまたま見慣れた多摩川の文字。多摩川にもバスがいるのか?と思い見てみると、なんとワタシのうちのすぐ近く、丸子橋がバスのポイントと書いてある(!)。ううむ、これはすごい。5月5日を待っていられない。御蛇ケ池へ行く前に一度、丸子橋へ行って投げてみなければ。

 

 5月2日。ゴールデンウィークは始まっていたが、この日は御蛇ケ池へ行く5日の振替として休めなかった。この日、G書房HIDEさん率いる釣り部の面々はG堂のKAWAMURAさん、C堂のTAKIさんも誘って、牛久沼へ出掛けている。ワタシも参加したかったのは当然ながら、ゴールデンウィークの予定を変えるわけには行かず、断念。代わりにこの日を多摩川行きに当てた。

 朝4時半起き。5時過ぎに多摩川の新幹線鉄橋下へ入る。バスがいるかどうかはわからないながら、ベイトにスピナベ。スピニングにラバジを付けて投げはじめる。対岸の東京側にもバス釣りと思われる少年たちがベイトで投げている。みんな早起きだなぁ。鉄橋の足の下で”ばしゃばしゃ”と何かが跳ねているのが見える。何かはわからない。しかしバスとは思えない。鯉じゃないだろうか。といぶかりながらスピナベを投げつづける。このスピナベはオモリの関係からか、決まってブレードの付いた方を上にしてくるくると回転させながら泳いでくる。そうなると、フックは必ず上を向いて泳ぐことになるうえ、スカートがうまくガードするため、根掛かりする事はなかなかない。くるくる回るブレードが魚の群れを演出しているという。ラバジの方は、どうもスピニングタックルと相性が良くないような気がした。遠投しようとしてもロッドがビヨンとしなってうまくタイミングがとれない。ロッドは硬い方が重いルアーでは投げやすく思える。やはり安い竿では駄目か…。投げながらコンビニで買ってきたおにぎりを食べる。すると、何処からかガアガアと言いながら白いアヒルが二匹泳いできた。と思ったら岸に上がった。どうやらおにぎりの匂いにつられて来たようだ。ワタシと一定の距離を保ちつつも離れていかない。そばに鯉釣りの投げ竿を持った人も現れた。アタリも全くないし、右手にアヒル。左手に鯉釣りの投げ竿、と、両方向からプレッシャーを受けて居づらくなり、バスのポイントで有名な丸子橋下へ移動する事にした。

 多摩川新幹線鉄橋下のアヒル

 移動しながら牛久沼の状況が気になり、電話。MANABUさん「釣れないよー、もうTAKIさんが持ってきたワインをみんなで飲んじゃって、釣りをするような雰囲気じゃなくなっちゃってるよ。」うーむ、何という事か。釣れないとはいえ、船の上でワインか…。いいな。「あきらめないで、がんばってよ。こっちもがんばってみるから」と伝えたが、あの様子ではどうだか。

 そうこうしているうちに丸子橋下へ到着。うーむ、すごい人の数だ。2,3メートルに一人の割合で投げている。もちろん、お仲間だろう。そうでなければあの距離感は普通耐えられない。水位はあまり高くなく、というかほとんど無い。工事中の丸子橋架橋工事用の仮橋下などで盛んに投げ込みが繰り返されている。遠目で横からその状況を見るにつけ、こりゃ釣ろうとする方が間違っている…と思わないわけにはいかない状態だ。急に気持ちが萎えてきた。本当にここでバスを釣った人がいるのか?とてもそんな事を信じられない、という思いのまま、帰る事にした。

 朝8時半ころ、帰る道すがら、牛久沼のHIDEさんに電話。「まだ釣れないけど、釣れたら速攻電話入れるよ」という積極的な姿勢。ワインを飲んでいないらしい。素晴らしい。MANABUさんとは大きく違う。「釣れたっていう電話を待ってますよー」と伝えて切った。

 その日、一日中眠い目をこすりながら仕事をしていると、5時過ぎにHIDEさんから電話。「やめる直前にゴミの浮いているところに落として巻いてたらかかったよ。お腹が丸々とした39cmのバスで、フィルムが切れてたから写真はないけど…。」釣ったそうだ。おおお、すごい。うらやましい。これは負けてはいられない。ますます5日の御蛇ケ池釣行が自分の中で盛り上がってきた。

 ちなみにボーズ記録を更新しているのは、G書房SHAさん、N書店MANABUさん、書肆HのRYOHEIくんの3人。MANABUさん!ワインを飲んでいる場合じゃないゾ。