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改訂版 少女物語 荒木経惟
太田出版 1991年6月6日発行

 女は男を求める。そして、男は女を求める。

女は自分にはない部分や性質を男に求める。男もまた自分の持たない部分や性質を求めて女を見る。男と女は互いに引き寄せあう宿命を持っている。それは哀しいくらい自分の思い通りにならない人間の本能的な運命である。しかし、互いが想いを遂げ、いざ一緒になってみれば、男と女は性質が根本的に違うということに気が付く。
 どちらかが歩み寄ろうとしなければ、互いの主張が平行線をたどることを思い知る。一緒になりたいと思えば思うほど、相手の心との違いに唖然とさせられ、陰陽不和に陥ってしまう。明治の文豪、漱石が絶筆した「明暗」の中で描いた男と女の物語である。

 およそこの世は、陰と陽、女と男しかいない。成熟した女性に男は惹かれる反面、すでに完成されてしまった性格はもう自分の思い通りにはならないことを知る。女になる過程で何かを得たかわりに、少女は何かを失ったのである。それが良いか悪いかは別だ。失ったものが大きいと感じた時、男は少年になり、少女としての女を求め始めるのかもしれない。

 この写真集に写っている少女たちは、7歳から17歳までの32人。皆メイクされ、衣装を着て荒木さんのカメラの前に立っている。荒木さんはペンタックス67で、少女たちのすべてを写し撮ってしまおうとする。

 美香サンは11歳。全体的にまだあどけない表情をしている。それでも和服を着てベッドに横になる。 すると目に表情がついてくる。
 美津子サンは14歳。素顔のまま、箱根彫刻の森美術館の男性像の前に立ち、ニッコリ。そして、旅館特設の「夢のゴンドラ」の前の笑顔は小学生といっても通りそうなくらい”女の子”だ。次の頁、濡れた水着姿の彼女が見せる表情は、すでに”女”という雰囲気を発している。そして和服姿にメイクした美津子サンが微笑すれば、もうそこには 妖艶なひとりの女性が写っていた。
 貴子サンは14歳。新宿中央公園で待ち合わせて、喫茶店へ荒木さんと同伴。メイクをして黒の大人っぽい服を着て、荒木さんの恋人を演じている。

舞サンは15歳。スタジオでライトを浴び、荒木さんのカメラの前に立っている。レンズに向けられたその目の表情は、15歳であることをやめている。変化し始めた自分の身体を充分意識した 女性としての表情だ。
 彩美サンは7歳。まだ小学2年生の彼女の持つ表情は、この写真集に写っている誰よりも”女”に見える。キッと荒木さんを見据えたその目。ペリエを傍らにロングの黒い髪が印象的だ。今ごろ、どんな 女性になっているのだろうか。

 帯書きに桑原甲子雄氏のコメントがある。「ここで作者は、少女から女を、そして娼婦を、という性の連想を視覚化することに一途である。しかも、そうした物語的地平を写真の表現として変換させることにも力を注ぐ。そこが、われら同業者にとっても主要な見どころでもある。そのことに作者はこだわりつづけてきた。そして顕著な成功といえるのが本書ではなかろうか。」 少女はいつまでも少女ではない。一年一年、年を重ねるごとに女へと変化していく。そんな様子をこの写真集で見るにつけ、男の罪の深さを思い知った。少女を女へ、そして娼婦へと変化させる大きな要因は、ほかでもない、男という存在なのである。男は少女の中の”女”を見たがる。少女はそんな男の身勝手に合わせようとし、少女性を捨てる。すると、男は女へと成長した彼女をもてあまし、ほかに少女性を探しだす。男と女の不和はすべて男の身勝手がその原因であるように思う。

 荒木さんは、無論、男である。撮影場所が温泉、湯島、新宿、渋谷 など荒木さんお得意の場所であることを考えると、彼女たちは”男”を代表する場所へと身を置いて撮影されていることになる。それは、ある意味で男の側から見た ひとつの理想がここに描かれているということにもなろう。しかし、彼女たちは鷹揚にそんな男の身勝手を受け入れる。やはり、男は女にカナワナイのだ。

 「少女は 間もなく 程なく 毛が生える 正直なカラダではない」 ねじめ正一

2000年6月13日記

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