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富岡多恵子氏と荒木さんの対談が、巻頭と巻末に分けられて載っている。その中で、荒木さんは写真小説についてこう語っている。「アタシはまず、女は小説であるという論で、ただ女が写っている写真を並べればいいって、単純に思っているわけ。」喜多見を後にした荒木さんは、早速私事にとりかかる。街で女のコに声を掛け、ラブホテルに挿入する。そんなプロセスをくりかえしたのか、ラブホテルで撮られた女のコの写真が並ぶ。京子サン21才、奈津子サン20才、慶子サン21才、清美さん18才、久美子サン19才。剃毛され、裸になって荒木さんのカメラの前に立つ彼女たち。たしかにその存在そのものが小説といえるかもしれない。
場所はラブホテルから荒木さんの恥部屋へ移る。妙子サン28才、涼子サン17才、睦美サン20才、そしてレナさん20才。ハイネケンを片手にレナさんが表紙の写真集「女旅情歌」を抱えてニッコリ。ここで荒木さんの脳裏に2年前のレナさんの姿が浮かぶ。熱海の金城館へ行った時の場面、浴衣姿を撮った場面、一緒に温泉に入った場面。と、思いつくままに場面が変わっていく。レナさんの写真を撮りながら、荒木さんの頭の中にはいろいろな場面がカットバックしては消えていく。そのなかで、ロマンポルノ女優、吉沢由起を撮った時のエピソードが詳しく挿入されている。「「ヤングジャンプ」の広告に、由起を劇写した時なんざ凄かった。最後なんざ大股小股ひらいて、スタッフみんなに、順番に入れてー、と猫なで声で娼笑。いくら酔っぱらっちゃったからって、こりゃー凄いぜ、カンドーテキ、ステキーッ由起ちゃん、みーんな勃起。」その時の写真はスポンサーがNGを出して、掲載はならなかった。
荒木さんの写真は私写真である。いつ何を撮っても荒木さんが持つ”私(わたくし)の視線”というものを感じる。この写真集のなかでは、愛する陽子さんの写真から始まって、駅までの道が事細かく写され、キャプションが付けられている。まず普通のプロ写真家で自分の妻の写真を発表する人は居ないし、シルクロードまで出かけていって写真を撮る人はいても、日常歩いている道を細かく写す写真家はいない。撮らなくてもいいだろうと思われるものを自分の価値観に照らして見逃さない私的な視線。言ってみれば普段着なのである。そして、行きずりの女のコ(という設定)は1枚でも、好きなコ(レナさん、由起さん)の写真は執拗に撮りつづる感覚。男なら誰しも思い当たるだろう。気持ちに逆らっていないこと、相手を思うことが結局は”写真”につながっていくのだ。 富岡多恵子氏はこう語る。「やはりプロは、大袈裟にいえばアマチュアリズムが大事でしょう。アマチュア性をプロがいつも持っていて、それと玄人の良さというのが拮抗した関係にないと、プロの面白さが出ない。アマチュアだけだと全然面白くないし、またプロだけだとこれはもう職人ですからね、何にも新しいものは出てこない。」至言である。 2000年6月27日記 |
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