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荒木経惟=写真生活 アサヒカメラ増刊8
朝日新聞社 1981年8月5日発行


 表紙からして凝っている。森の中の湖のほとりに佇む荒木さんが水面を見詰めている。よく見ると、水面には大笑いしている荒木さんが写っており、「アサヒカメラ」が「アラキカメラ」と水色の字で揺れている。これは、「レスポンス300」というコンピューター製版機を駆使して作成した労作なのだそうだ。しかし、この表紙、出版した朝日新聞社内でちょっとした問題になった。「アラキカメラ」とはなんだ、と。デザインと構成をした木村恒久氏は責任を取らされたという話が伝わっている、曰く付きの本である。

 表紙をめくると、扉ページにいきなり「アラキカメラ」の文字と二眼レフ(ミノルタオートコード)のレンズにコラージュされた荒木さんが二人。表紙と対になっている。うまい構成だなぁ、と感心してまためくると、「ラブホテルで楽写、過激写」とあり、荒木さんの写真に写真時代の編集長末井サンの文章が添えられ、ラブホテルでの撮影風景の様子が描写されている。

「現実にはドラマなんてどこにもないけど、女はいつもドラマのヒロインを演じたがっている。このことを荒木さんはよく知っていて、デタラメ・インスタント・ドラマを撮影のたびにつくってしまう。「女はすべて女優である」という荒木テーゼは正しいのだ。」女のコの気持ちをつかむのがうまい荒木さんの現場での様子はどうなっているのか。「「はい、カメラが恋人なんだから、見つめてあげて」カシャ。もう撮影は始まっているのだ。「どういう感じに撮られたいの?うんとスケベに?」「きれいに」なんて女の子は言うのだが、「きれいにか、きれいだけじゃつまんねぇだろう」なんて荒木さんは言う。「早く勃起させてよぉ、こっちは初老なんだからなかなか立たないんだよ。初老の男とラブホテル入ったんだから」。荒木流即興ドラマは始まっているのだ。」「「はい、そこで脱いでいって下さい。どっちから脱ぐの?上?下?あ、ちょっとそのまま、そのブラジャーいい。はい、ブラジャー取って下さい。早く、下も脱いで。おっ、かわいいパンティーはいてるじゃない。いつもそんなのはいてるの?全部脱いで。かくさない、かくさない。はい、そこに座ってください。かくさないのぉ、広げて広げて、見せたって減るもんじゃないだろ。」」と、言葉巧みに女のコを荒木さんのペースに乗せてしまう。その結果がラブホテルでの大股開き写真である。当時はご法度だから、女陰の部分には別の絵が冗談っぽく張り込まれている。

 

 やはり荒木さんの興味は女性が中心のようだ。ただ、女性を撮りたい、という単純な視点ではなく、男が本能的にどうしようもなく惹かれてしまう女性という存在、男性にとってのエロスを感じる女性と言う存在を見詰める視線、そういう接し方をしているように思う。

 そのあたりの事について、別のページで糸井重里氏が違う角度から語っている。「彼のよく使う設定、ラブホテルで浴衣をはだけた女性。ここでエロなのは、すべて作りものとしてのエロである。ラブホテルがエロだ。浴衣がエロだ。はだけるという行為がエロだ。それをカメラに向けてさらすことがエロだ。表情がエロだ。顔つきがエロだ。もちろん、このすべてがエロではあるはずなのだけれど、そのエロエロのエロは、どれも荒木経惟と読者が意識的に「エロと決めたエロ」なのである。」確かに荒木さんの描くエロには物語があり、ビニ本のような単純明快な”ヌける”内容ではない。荒木さんはあくまでも荒木さんの視点で女性とは何かを写真にしようとする。そこに映し出される女性は、物語になったり、風景になったりするが、あまりエロ本のイメージはない。

 「男根も女陰も、性行為も、それ自体エロでもなんでもない。エロなのは、そこにくっついているイメージの垢であり、妄想の黒光りなのである。」糸井氏は荒木さんの写真を「なんでもないものをなんでもなく撮っている」と語る。荒木さんのよく使う”複写”という言葉を思い出す。そして「ストイックな大脳に、エロの衣装を何重にも着て、トリックスターを演じている」過激な古典主義者と位置付ける。ただ、糸井氏がいうほど、なんでもないように撮ってはいまい。自分の撮りたいものを撮るために、荒木さんはいろいろなテクニックを使っているように思う。

 

 「オレはシノヤマだぞ。きょうはカツラ取ってきたんだ」初対面の女のコにこんなジョーダンを飛ばして撮影に入る荒木さんは、やはり女性の扱いがうまい。これも女性を撮るためのテクニックだ。こうでなくてはうまい写真は撮れないのかもしれない。

2000年7月25日記

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