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写狂人大日記 荒木経惟
スイッチ 2000年4月15日発行

 荒木さんの過ごした90年代が日記写真でまとめられている。とにかく、膨大な写真が 時には見開きで一枚、かと思うとページ18枚という配置で編集されている。めくってもめくっても写真があり、人が居てこちらを見つめている。仕事写真も私事写真も区別なくテンコ盛りだ。
 題名にある「写狂人」という言葉について、荒木さんはこう語っている。「(葛飾)北斎が晩年、絵に狂うってことで画狂人って名のったのにならって、オレは写狂人にしたの。もう天才はアキたからさ(笑)。オレはまだ写真に狂ってないんだよな。トリップしようとしても、バシャッとシャッター音で目覚めさせられちゃう。それを超えてもっと狂えという、自分に対する励ましを込めて写狂人ってわけ。」 なるほど画狂人北斎にならったというのもすごい。その名に違わぬトリップぶりだ。

 写狂人の90年代は妻陽子さんの死から始まってしまう。90.1.1.陽子さんの居ない正月。バルコニーでチロが退屈そうに寝転んでいる写真。「センチメンタルな旅・冬の旅」からの写真が続く。ひとつの別れが荒木さんの写真に画期を与えたのだろうか、それとも日記写真として編集されたものを見ているからだろうか、何か熱狂的に”面白い”と思った一刹那に向けてすべてシャッターを切っているような雰囲気で写真集は進んでいく。

 90.1.28.陽子さんの葬儀で「好きになった人」を絶唱する中上健次。2.7.早稲田の黒猫を抱いた少女。2.24.逆さ都庁。4.4.妙誉陽珠清信女之図。4.29.パーティーで森山大道氏と。6.20.女子高生とビール。7.11.渡辺真理奈。7.19.小泉今日子サンと。8.6.「炎昼の虹の中に笑顔のヨーコ」。9.7.小学生たち。10.17.夕暮れの海。10.6.ARAKISS。11.9.夢二スチル。11.22.篠山紀信氏と談笑。12.5.豪徳寺の老夫婦。12.31.夕暮れの飛行機雲。他の年に比べると空の写真が多い。

 91.1.1.再びバルコニーのチロ。1.7.高円寺都丸書店の看板と力士。2.1.吉本ばなな氏とカラオケ。3.3.ダブル黒猫眼飛ばし。3.21.佐紀子サン初出。4.17.アラキネマ春景。5.1.アラキカメラ。5.27.旅少女。7.16.桐島かれんと恋愛中。8.3.秋桜子さん初出。8.30.NHK近未来写真術出演。9.13.道玄坂お好み焼き清崎ウィンドウ撮影。9.16.林葉直子。10.1.ユーミン。10.15.ムッシュ桑原。10.24.ニッポンのおじいちゃん笠智衆。同日円覚寺小津安二郎監督の墓前へ。11.21.「恋愛」出版記念。12.31.ハエ皿とイコンタ。夕暮れのバルコニー。人物写真が増えたような気がする。

 92.1.1.空、だろうか。2.22.稲城駅にジッツオ立てて。3.3.ペンタックス67で東京アッジェ中。4.17.ナン・ゴールディンとホテル三千院。5.11.樋口可南子サン。7.4.小学生3人小便大会。8.22.中上健次氏鬼籍に入る。9.21.制服の(秘)処女。11.5.鷲尾いさ子。11.29.うろこ雲。12.31.自宅?

 93.1.6.夕暮れに立つペンタ67。1.12.豪徳寺一丁目通学路。1.20.ナースのお仕事。2.4.セーラー服の墨田ユキ。2.25.「雅びやかなり死今宵夢(コンドーム)」。3.31.絵留対祥見磨子競演。5.4.路上扇風機。5.26.刺青。6.14.浅香唯。9.17.葬列。9.20.ARAKISS。10.23.ノエさん。12.2.「摘発されたアラーキーのヘアを超えたワイセツ写真」の車内吊り広告。12.31.夜空。

 94.1.1.月。1.5.射的。2.12.大雪。2.3.テリー。2.14.佐野史郎。3.29.風吹ジュン。3.12.新宿ゴールデン街。5.5.雲。6.4.ヒロミックス。7.11.鈴木砂羽。9.28.辰吉丈一郎。10.1.長塚京三。10.5.大塚寧々。11.21.不忍池に田中裕子。12.31.深夜のバルコニーにTV。

 95.1.1.ドアにチロ。1.16.鮎子サン。1.23.ナターシャ。2.4.「偽恋」撮影。2.18.「東尾衝撃突然死」。3.18.ベットでジャンプ。3.30.中島唄子。4.18.バルコニーで珍獣と対面するチロ。5.13.恥部屋でチエさん。7.26.両手にマン。8.15.皇居二重橋。11.22.こづるさん。12.14.藤田朋子。12.31.風呂板で寝るチロ。

 96.1.2.バルコニーでチロと珍獣。1.10.プロペラ。1.19.横尾忠則。2.2.ビョーク。2.7.東ちづる。4.1.沖縄烈情。6.8.竹中直人氏チロを抱く。6.17.ランドセルと寝入る会社員。8.3.猫の生活。9.2.女性タクシードライバー。10.26.秋桜子さん。11.8.柳美里とツーショット。12.31.楽園にチロ。

 97.1.1.ワニーンと珍獣たち。2.5.町田康。2.25.北野武。4.15.バルコニーに中山美穂と竹中直人氏。5.1.センチメンタルな5月。5.19.東京日和収録。5.23.藤原紀香撮影。7.11.水島裕子。7.30.ジャイアント馬場さん。10.6.バルコニーに秋刀魚が泳ぐ。11.4.RAINYDAY市川染五郎。12.31.FAKE LOVE。

 このあとも99.12.31.まで写真は続いてゆく。

 これだけ膨大な写真を撮り続ける荒木さん。見ていくと、女性のヌードは日常的に撮影されているが、他は自分の身の回りに起きたコトや身の回りにいた方の写真が圧倒的に多い。
 「荒木 長続きするには撮り続けることですよ。撮ることによって自分を発見するし、何かに気づく。いつも何かに気がつかされてれば、続いていくわけ。写真家っていうのは撮ることによって教えられるんだよ。写すことが自分の先生だからさ。写真を撮ってればいいんですよ、ずーっと、ずーっと。
 八角(聡仁氏) 何かテーマを見つけて撮るような写真家の場合はそれが見つからなくなると撮れなくなっちゃうけど、荒木さんはテーマを撮るのでも、もしかすると被写体を撮るのですらなくて、「写真」を撮ってるんですよね。写真で何かを撮るより、写真を撮ることそのものがテーマだから。
 荒木 そうなのよ。だから、ただ撮り続けているんだよ。何を撮ってるか、実はオレもよくみてないんだ。きっと何も撮ってないんだよ。撮るだけの行為、そうかもしれないね。
 ホンマ(タカシ氏) それはすごく感じますね、見てて。
 荒木 撮り続けてれば、あとはカメラがよく見て吸い込んでくれるんだよ、アタシの場合はね。」
 以上の対談が「荒木経惟の写真術」に収録されており、この巻末に再録されている。

 撮ることによっていろいろなことを発見し、次を撮りたくなる。このモチベーションの取り方は一見すると写真家だったらアタリマエのようにも思えるが、それが20年、30年と続くとなればどうだろう。荒木さんは陽子さんの死をも写真を撮ることによって乗り切っているだけにその言葉の意味は重い。
 それだけに、荒木さんの言う「撮るだけの行為、そうかもしれないね」という発言を言葉通りに取らない方が賢明だ。撮ることそのものに撮る者の意思が知らぬ間に反映されているのが写真だからである。

 何に興味を持ち、何にカメラを向け、いつシャッターを切ったか。”撮る”という一言に含まれるプロセスは実はたくさんある。興味を持ったけどカメラを向けなかった、とか、カメラを向けたけどシャッターを切らなかった、では写真として残らない。アタリマエのことだが、いくつかの心の中の動きを越えてシャッターを切らなければ写真としてそのときの”想い”は残らないのだ。小説家であればあとで思い出して描写すればいい。しかし写真家はその瞬間を捉えなければ表現にならない。
 ホンマ氏の「それはすごく感じますね」という発言に応えた荒木さんの最後の言葉、「アタシの場合はね。」の中には、ホントにわかってんのかな?コイツは?というニュアンスが含まれているような気がしてならなかった。

2001年7月21日記

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