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制服の(秘)処女 荒木経惟
白夜書房 1993年4月30日発行

 帯には「卒業します。」とタイトルよりも大きいポイントで大書きされている。制服姿をした女子高生らしき東京リセエンヌ30人が写っている写真集だが、彼女たちが本当に女子高生なのかどうかは本当のところよくわからない。目次には名前が列挙してあるだけである。ましてタイトルにもある、彼女たちが処女かそうでないかもこの写真集からはやはりわからない。
 高校を卒業するのか、それとも処女を卒業して女になるという宣言なのか。なんとも意味深な帯書きである。

 一時、生徒を取り締まるだけの校則などは廃止してしまおう、という気運が一部リベラルを売りにする高校の生徒たちのあいだで高まったことがあった。そこでは、制服と校則が結び付けられ、自由を奪われている象徴としての制服も同時に廃止された。通学時や授業の間など、私服で過ごすことができる高校が”進んでいる”と言われた時期が確かにあった事を記憶している。
 現在シブヤの街を歩くと、女子高生は自ら進んで制服を身につけている。夏休み中でもわざわざ制服を着ているコもいるくらいである。皆ケータイを持ち、膝上までかなり短くしたスカートにルーズソックスという姿が標準的ジョシコーセイの姿となった。繁華街を闊歩し、20歳をオバサン呼ばわりする彼女たちにとって、制服は自分が”旬”のジョシコーセイであることを自らアピールするための戦闘服と言えるだろう。しかし、あんな若い頃から厚化粧をしていては、本当に化粧が必要になる年齢のときには化粧ヤケして使えなくなってしまうだろうに・・・。 そんな彼女たちを見るにつけ、制服を廃止してまで手に入れようとしたものは一体なんだったのだろうか、と思わずにはいられなくなった。

 余談が過ぎた。さて、制服がアピール服になってしまった時代の来る少し前、白夜書房の末井サンと荒木さんはこの写真集を世に問うた。セーラー服やブレザー姿の”東京リセエンヌ”たちが、公園や街頭やスタジオで捉えられている。公園の水飲み、ハーモニカ、ラムネ瓶、バナナなど、男根を象徴する形をした小道具を口に含む彼女たち。カメラをじっと見詰めているコもいれば、目を閉じているコもいる。口に当てるだけのコもいれば、歯や舌を当てるコもいて、それぞれだ。
 女子高生にもなれば男を意識するのは自然だ。撮影の時大人が出してきた皮のむけたバナナがどんな意味を持っているかは彼女たちもすでに知っている。でも、知らないふりをして写った方がいいのかしら、と、荒木さんにカメラを向けられながら、微妙な表情をするコはそんな葛藤と戦っているように見えた。小道具は、まだあどけない笑顔を見せる彼女たちの”女”の部分を見透かす荒木さんの写真術の一部なのである。

 制服を着てた少女が水着姿になったりするのはアイドル誌などを見ればまだ想像のつく構図だが、巻末の二人は制服のまま温泉旅館まで連れて行かれてしまった。蒲団の敷かれた横にある鏡台の前に座り、浴衣一枚の彼女が微笑をたたえて振り向く姿には不意を衝かれた。次のカットの、カメラをじっと見詰めながら胸元に手をやり、枕元にスッと立っている姿を見て、『センチメンタルな旅』の柳川の一夜に気持ちが飛んでしまったのだ。スタイルのいい裸体が浴衣の上から透けて見えるような気がした。この写真は実際にヌードになるよりももっと彼女を裸に剥いてしまったのだ。
 それにしても、一途にじっと見詰める彼女の表情と温泉旅館に浴衣というシチュエーションで、新婚旅行での夫婦の夜の営みを連想してしまうとは・・・。筆者の荒木病もここまで進行したか、と苦笑いした。

 自分自身でも捉えようのない意識の下にある、人間の発生に関わるどろどろしたところに何か重要な本質が隠されているような気がしてならない。そんなもやもやとしたはっきりしない部分をいつも直視している荒木さんの写真には、人間の意識下に直接働きかけてくる”何か”が写り込む。それは大抵は言葉に置き換えることが出来ないため、意識を集中しなければうっかり見過ごしてしまいかねず、興味本位な目には見えなかったりする。言葉にならない言葉未満の”コト”。それはある時とても重要な意味を持ちながら、自分から大声を出してその意味を知らせてくれるわけではない。荒木さんの写真が語ろうとしていることに耳をすましたい。写真という手段を使わなければ伝えられないことは、認めようと認めまいと確実に存在するのだから。

2000年10月10日記

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