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びっしりと荒木さんの文章が敷き詰められている章もあれば、写真だけの掲載で、あとは編集者のキャプションしか載っていない章もある。やはりそのあたりの統一性のなさはギャラの出ないガロならではとも言える。 女優志望の関村妃サンを初めて撮ったのは彼女が中学生の頃だった。その後、1年間撮り続け、丸3年のブランクを経て19歳になった彼女の写真がイキサツを含めて載っている。ロングの髪にメイクした表情には少女だった頃の面影は少なく、少女はたった3年で女へと変わるものなのか、と嘆息する。この後、雑誌の表紙を飾ることになっていた彼女は女優への階段を駆け上ったのだろうか。 「母に送る妻の写真」という章には、陽子さんのお母さんに宛てた荒木さんの直筆手紙と写真が載っている。『私の妻の母は、妻を生んですぐに離婚した。それからずーっと女手ひとりで妻を育てた。――苦労した。 50歳で激しく恋をして、在アルゼンチンの貿易商若宮氏を追って(呼びつけられて)単身アルゼンチンに婦任。そして一年がたった。 この手紙は、そんな妻の母にあてての初めての手紙である。』とあり、5枚に及ぶ手紙。そして、陽子さんの日常を撮った写真。 狛江の豊栄マンションが自宅のころの写真である。――居間でカーペットに直接置いた新聞を読む陽子さん。ダイニングでパジャマのまま体操をする陽子さん。近くをジョギングする陽子さん。居間に置いた石油だるまストーブからヤカンを取る陽子さん。ヴェランダの鉢植えを持ってニッコリする陽子さん。居間で音楽を聞きながらティータイムを過ごす陽子さん。キッチン前に置かれた電話を取って「アナタ電話よ」と言っている陽子さん。夜近くのコインランドリーでテレビゲームに熱中する陽子さん・・・。最後には、荒木さんと二人のツーショット写真がピンナップされた居間の写真で終わっている。手紙の中には「楽しく、幸せにやっています。」と荒木さん。ここには写真からほとばしる幸せが溢れている。写真には浪曼も幸福も、そして不幸さえも抱え込める懐の深さがある。
巻末ではガロ編集の3氏が荒木さんについて語っている。 他にも、荒木さんの部屋に行ったときにいきなりドアを開けたらハダカの女の人を撮っていて、「だめだよー」と怒られた話(モデルに気を使っている)や、荒木さんの写真展の会場へ向かっていて道に迷ってしまった時、荒木さんのひときわ大きな声が場外まで聞こえてきて場所がわかった、なんていうエピソードが紹介される。
『南 荒木さんはフツーの天才じゃない。荒木さんは成る天才なんだよ。フツーの天才は欠けたものの代償で天才を得るんだけど、あの天才は過剰に代償した天才なんだ。ひょっとするとなにかギセーにしているかもしれないけどさ。 荒木さんは日常をギセーにしてまで、自ら”荒木経惟という写真の天才”を演じている、ガロの編集者はそう見たのだ。 2000年9月12日記 |
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