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当時は女陰はもちろん、陰毛も描写することが出来なかったため、それを逆手にとって女陰部分を白丸で抜き、「検」「閲」と書き入れたり、絡み合った部分を切り抜いてコラージュしたりしている。この写真集では、昔から積み上げられてきた「どう撮影したら女性を美しく撮れるか」というテーマを根底から否定し、むしろ「どう撮影したら女性は女性という薄皮を脱いで”人間”として写るか」が追求されているような気がする。
美しくなければ撮影するに足らないのか。女性は美しくなければいけないのか。この二つの呪縛からの開放がこの写真集のメインテーマと言えそうだ。
二人が絡みあうそばに、毛むくじゃらの足が写り込み始める。遠慮がちに二人の傍らにいたその足は、次第に図々しく絡んでいる二人を跨いだり、座って足を開いた女陰に突っ込んだりし始める。寝っ転がった女性の局部を這い、乳房を、乳首を触りまくる毛むくじゃらの左手。これは撮影者である荒木さんのものに間違いない。モデルを二人とも全編にわたってヌードにした以上、撮影者も素っ裸だったのではないか、というのは筆者の想像だ。ほかに誰もいないスタジオで、女二人、カメラを持った男一人が全裸で撮影に没頭している姿が現実にあったならば、それはかなりキワドイ写真行為だ。
たまたまなのだが、この「おー日本」の宣伝葉書が本に挟まっていた。当時の7円葉書だが、荒木さんの署名はない。
宣伝葉書に「藤圭子さん、ご婚約おめでとう。」と書いた内田栄一氏が、巻末に全裸で登場し、この写真集の解説を書いている。 戦前、戦後を通じてずっと続いてきた価値観が大きく揺れた60年代から70年代。大学はロックアウトで授業もなく、ただただ既成の概念や価値観を破壊する行為が延々と続けられた。そんな時代に、荒木さんは美しくない女性のヌードを並べたこの写真集で当時の総括をしようとしたのかもしれない。
奥付に、大股開き写真のちょうど女陰部分に自分の自写像をレイアウトし、「写真芸術家」と肩書きを書く、若き日の荒木さん。裏表紙には「われわれへの決意・・・われわれの解決」と刻まれている。荒木写真の評論の大家である飯沢耕太郎氏までも、この写真集の評論を意識的に避けてしまった。それほど理解しがたい存在なのだろうか。我々は荒木さんの”決意”を受け止めるだけの”解決”を現代に至ってもまだ見出せていないようである。 2000年10月3日記 |
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