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日記写真風に荒木さんの”夏”が描かれていく。仕事から帰れば夏空とバルコニーとチロ。このパターンは何度となく繰り返される。西麻布のハウススタジオでS&Mスナイパーの妊婦緊縛写真の撮影。原美術館の下見。タイサンボクの花。バルコニーのワニーンやコモドンたち。夏空に照らされる豪徳寺のご近所。クルマがぶつかったか、で塀に寄りかかったままの「止まれ」標識。曲がったほうをまっすぐに撮る。7月の高い日差しに照らされている豪徳寺駅前は人影もまばらだ。 雨のバルコニー。荒木さんの写すバルコニー写真では、スコーンと晴れた日の写真も無常感があって好きだが、実は雨の写真が一番好きだ。水がたまって鏡のようになった床と、フラットな光は透き通るような透明感を風景に与える。雨に濡れる錆びたテーブルとイス。テレビにのしかかるように勢いを増す蔦と、傍らの首なし小便小僧。 どこか淡々と続いていく荒木さんの夏小説に、レトログラフが挿入されている。「カラーはね、原美術館の展覧会が「レトログラフス」ってタイトルだったから、そのころ「ポラエロ」とかやってたから「レトエロ」ってタイトルでアラキネマやったんですよ。むかしのね、パラパラ見たらいくらでも出てくるんだよ。そしたらおもしろいから。元気だったね。ちょうど『写真時代』で文学やってたころですよ。文字もいっぱい書いてね。」と、あとがきにもあるように、アラキネマで上映された写真がカラーで何ヶ所か挿入されている。芦ノ湖の水上スキーをヌードでさせたり、夏の京都東山を歩いたり、末井さんとモデルと一緒に温泉に入ったり、ライトをぶつけて小股開き写真を撮ったり・・・。また、陽子さんとの”愛情旅行”の写真があったり、回想的「レトエロ」には”夏”写真があふれている。筆者は一度もアラキネマを見たことがない。これだけ沢山の写真が一挙上映されたとしたらすごい迫力だっただろう。 過去を「夏」と決めてしまうと現在は秋か冬ということになる。もちろん、季節は巡るから冬のあとに春がくるかもしれない。しかし、写真時代の写真の楽しそうな現場写真はまたいつか巡ってくる夏写真としても、陽子さんと過ごした「愛情旅行」は再び戻ることのない「夏」写真である。荒木さんの季節もまた、陽子さんがそうであったように「冬」へと日々向かっていることだけは間違いない。アマンドピンクのコート姿をした陽子さん。もう戻らない夏の日。
原美術館の”プール”ではしゃぐMASHさん。沖縄から来たノエさん。陽子さんに捧げられた「花曲」。三ノ輪のイエモン。門に張られた妊婦緊縛写真。この写真について、キュレーター内田氏の解説がある。 青い空と白い雲。荒木さんの思い出としての夏小説。 2000年12月19日記 |
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