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墨汁綺譚 荒木経惟
AaT ROOM 1994年11月3日発行
 真っ赤なベルベット張りの装丁に、荒木さんの筆により「墨汁綺譚」と押してある。豪華な造本である。真中には尼僧が耳から墨汁を垂らしている写真。これは撮影時に垂らしたのではなくて、写真にしてから垂らしたものだという。
 『S&Mスナイパー』に連載されていた時には≪墨汁綺譚寫眞倶楽部≫というタイトルが付いていた。SM誌に連載されていた写真は、当然ながらSM色を帯びる。
 柱に縛り付けられた女。その陰部には墨汁が垂れる。畳の上で縛られた女の周りには皮を剥かれたバナナが散乱し、陰部からは墨汁が滴る。妊婦は亀甲に縛られ、花を活けられる。筆を持った荒木さんは、サトイモの葉で顔を隠す。
 この写真集は、永井荷風の『墨東綺譚』にあやかっていることはすぐにわかる。荷風はこの本の中で、東京の玉の井という私娼窟を舞台に、大江という老作家と、娼婦お雪との恋と別離を描いている。荷風は、浅草六区のロック座、大都座などのストリップ小屋に通う日々を送ったこともあり、ローライの使い手でもあった。荒木さんと興味を持つ共通点が不思議に多いのだ。
 そのためか、撮影の舞台は娼家を思わせるような畳敷き障子張りの部屋が多く、モデルの女も和服をはだけているなど、どことなく文芸色が強い。

 縁そばの部屋で端近の柱に足を縛り付けられた女がバイブを突っ込まれて苦悶の表情をする。その横で荒木さんはジッツオの三脚にペンタックス67を据え、剣菱の一升瓶からコップ酒を片手に一筆したためる。「カキ喰えば 幸姫泣く 初冬かな」 女の口と女陰から墨が垂れているのはもちろんだが、荒木さんの口からも墨がだらりと流れ落ちる。女は歓喜とも苦悶ともとれる涙を流す。
 この一筆したためは、恒例になっているようで、現場の様子をあらわした言葉が一緒に写しこまれている。
 トイレの便器に座っている女が午後の紅茶を手に持って「午後のリアリティー」。道端を尼僧が通りかかり、電柱に「M僧募集」。「SM愛について」と黒板に書かれた教室で、机の上に縛られた女のそばには「タンポン タンポン 机の上に 花ひらく 花風散人」。セーラー服の女を縛り、スカートをはだけさせて陰部に墨付けしようとする荒木さん。「陰毛礼賛」とあるのでよく見ると、女の陰部には毛のエクステンションとしての黒い鳥の羽。おまけに荒木さんの頭と腋にも付けてあり、毛が礼賛されていた。
 駄洒落といえばダジャレである。他にも「モガニズム モボボにもぐる」や、カニを女に載せて「カニバリズム」としたためる。この時には、ダジャレではなくパリ人肉事件のカニバリスト佐川一政を撮っている。
 女陰はもちろんのこと、口から耳から、眼からも墨汁は垂れている。人間だけではなく、電柱やハイヒール、壁の穴からも墨汁は滴り落ちる。当初は”取り締まられるから”と、墨汁で女陰を修正するために発想したこのやり方は、いつしか表現にまで昇華されてゆく。人間に限らず、性的なエネルギーが目に見えるとしたら、こんな風にほとばしっているのではないだろうか。
 六本木のコンドーム専門店のでかいコンドームを頭からかぶって、覆面レスラーのように目の部分に穴をあけた姿の荒木さん。ロンドンからこのセルフポートレイトの注文が入っているらしいのだが、壁に寄りかかって愛機プラウベルマキナを首から下げた姿は妙にキまっている。頭のてっぺんの”ため”部分からピュっと出ているのもお約束だ。

2000年9月5日記

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