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京都で開かれるバルテュス展を見に行ったり、軽井沢の万平ホテルにあこがれて泊まりに行ったり、肋膜炎になった病み上がりの荒木さんの療養と称して伊勢志摩観光ホテルへ行って一流の料理を堪能したり、と実に楽しそう。そんなお話が全部で13篇入っている。その旅行でのエピソードが陽子さんから見た荒木さんの姿を事細かに描き出してくれている。読み始めたらいつも一気に読みきってしまう不思議な本だ。 「古都に行ったからといって、古寺散策などはしたくない、旅行ガイドでチェックしといた喫茶店めぐりをやる、市場の中をほっつき歩く、路地裏の野良猫を探し歩く、などというショーモナイ趣味は、相手につきあってもらうと、気を遣って疲れ果てる」ので、旅行中にお互いの自由時間を持つことにする。「自分がそんな風にショーモナイ趣味を愉しんでいる間、相手もまたヒトには絶対理解できない愉しみに浸っていたりする(パチンコ屋のはしご、B級映画館での昼寝、或いは昼食にカツカレーとラーメンを貪り食う・・・ウチの夫の場合、京都に行くと、自由行動はいつも「金閣寺の撮影」です)。」日常夫婦をやってはいるが、四六時中一緒にいるわけではない。お互い仕事を持っていたりすればなおさらだ。むしろ普段の方がそれぞれの時間を持てるものだ。旅行では、一緒にいるんだからとがんばって無理をしてしまうと、それぞれのやりたいことが出来ずに不満がつのってしまう。そこで荒木夫妻の考えたのが旅行中”お互いの自由時間を持つこと”だった。「一人でバカ気た愉しみに浸った後は、なぜか相手に対してやさしい感情が湧いてきたりするものだ。」おかげでその日の夕食は二人でおいしく食べられ、旅行は楽しいままに過ごすことができる。じつにさばけた考え方だと思う。何年も夫婦をやっているから出てきた考え方ではなくて、すでに「センチメンタルな旅」でも、この「自由時間」は写真として残っている。
「バルテュスの夏」では、京都市美術館でバルテュス展が開かれるのを見に行こうと、宿泊を神戸ポートピアホテルにした。トゥール・ドールというお店で陽子さんの友達のユミコさんを交えて食事。怪しく酔い痴れた3人は部屋に戻って「女二人がベッドカバーの上でじゃれつき合い、脚をからませたり、舌の先をくっつけっこしたりしているところを、夫がバシャバシャと撮る」という”3P”を繰り広げた。
京都に紅葉を見に行った時、陽子さんの書いた文中に「センチメンタルな旅」を振り返るくだりがある。 「実ゆーと、ヨーコが計画した旅に私はついてゆくだけなのである。どこだっていいのだ、ヨーコといっしょなら。」楽しいことにはとことんまで突っ込みたい陽子さん。自身でも「子供っぽい」と語る彼女の性格を理解し、一緒に愉しもうとする荒木さん。そんな荒木さんが陽子さんの遺影に選んだのは、この愛情旅行の「バルテュスの夏」からの写真だった。
「いつも私はホテルの部屋に入るとすぐセックスしたくなる。ベッドにおしたおし下だけ脱がし強姦する。シャワーを2人で浴びる。ディナーに行くおしゃれしたヨーコを窓明かりで1枚撮る。素敵なヨーコ、愛しのヨーコ。」 2000年5月30日記 |
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