1998年11月東京都庁展望室 PENTAX MZ-5 FA43mmF1.9Limited


FA43mm

 ライカ双眼鏡を展望室の窓辺に置いて新宿の街を背景にして撮影した。この展望室は無料で入場出来るため、たびたび訪れる。この展望室から外を見渡すと、はるか彼方に山並みが見えるほかは、ほとんど隙間も無く並び立つ建物ばかりが目に入ってくる。近年は高層建築も急ピッチでその数を増やし続けている。もちろん、そのすべては何百年も前からそこにあった物ではない。全部人間(日本人)が考え、構築したものだ。「自然」と言えるものなど全然無いと言えるだろう。点在する緑さえ、人間が計画してそこに配置しているものであり、「自然」とは言えないのだ。つまり、都庁の展望室から見えるものはすべて人工物であり、人間の手が加わっていないものを探すことはほとんど無理だ。見渡す限りの人工物のなかでなんとか残っている自然の領域「空」でさえ、高層ビルという「人間」が徐々に食いつくし始めている。風景が人間で埋め尽くされようとしているのである。私達はいつまで空を眺めることが出来るのだろう。慄然とせずにいられようか・・・。

 MZ-5は一眼レフの老舗、ペンタックス製のAFカメラである。1995年にデビューした時には植田正治氏の広告写真と共に評判を得た。現在は後継機にして上級機のMZ-3が発売され、中古価格も下落した。ただし、基本性能はもともとしっかりしており、名機ペンタックスMXをAF機にリニューアルしたような印象を与える。AF一眼レフカメラが常識としていたデジタル操作を改め、ダイヤル式操作を実現した。このため、取扱説明書を読まなくてもカメラを使い慣れた人ならば直感的に操作することが可能になった。消費者は多機能化をメーカーに求める悪い癖を持っているが、実際にはその機能の半分も使いこなすことは出来ない。このMZ-5にはプレビュー機能さえ無いが、普段の撮影でプレビューまで気を配ってカメラを操作している人がどれだけ居るだろうか?こうした普通のアマチュアでは「実際には使わない機能」を省いたわかりやすい特徴が受けて、MZ-5はペンタックスの久しぶりのヒットとなった。Z-1のハイアマチュアを狙った中途半端な自己主張は、ニコン・キヤノンの影に隠れて消えてしまったが、MZ-5の発想は二大メーカーにも負けないくらい今も光っている。

 レンズは1998年に発売されたAFパンケーキレンズ。ペンタックスには40mmF2.8という名パンケーキレンズも過去に存在する。そのレンズがMXに似合うレンズだけに、MZ-5にはこのFA43mmF1.9がベストマッチだ。43mmという焦点距離は中途半端なようだが、実はライカ判フォーマットにおける「標準」焦点距離は43mmであり、このレンズは標準レンズの中の「標準」と言えるのである。写真家大竹省二氏がプロデュースした金属鏡胴の仕上げの良いレンズで、ポートレートにもよろしい。また、絞り開放から使え、独特の立体感を再現する。少々定価が高いような気もするが、所有欲の湧くようなレンズをちゃんと作ろうとするとコストが掛かるということなのだろう。

PENTAX MZ-5 FA43mmF1.9Limited

FA43mm (1)

 今まで目にも止めることのなかったAF一眼レフをとうとう買ってしまった。このカメラはシルバーと黒の2色が用意されているが、SLRは黒で統一することにした。東横線の学芸大学を下車しててくてく歩くこと10分の目黒Sカメラで買った。機能を考えれば絶対安い28,000円。ストラップなど純正品を付けてくれた。LX、MX、SP、MZー5と、すべて黒である。やはりデジタル操作でないだけ使いやすいが、AFの基本性能が今ひとつか。特に近接でAFがなかなか合焦しないことがある。これはAFカメラが背負った宿命なのだろうか。FA43mmは最近のお気に入り。中野で5万円も出して買った。現在は5千円ほど安いが、シリアル番号が0000255である。3桁シリアルというのも気分が良いものだ。女房が「私でも写せるカメラというのはこのペンタックスかコニカのビッグミニのこと。やはり女性はAF志向が強い。

1998年11月1日記

2016-03-25 | Posted in 甘露PHOTO日記Comments Closed 

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