1999年1月箱崎 PENTAX LX SMC-PENTAX M40mmF2.8


M40

 道路が高架になり、不遜にも人間様の頭の上を走りはじめたのは何時からだろう。少なくとも日本では東京オリンピックが一つのきっかけとなった。その時に日本の国道1号の基点、日本橋の上までも高速道路が覆い被された。
 異常事態である。しかしその感覚さえ磨り減ってしまって久しい。この写真に写っている「道路」はもはや道路を越えて建築物となっている。現在、この高速道路に走る車の数はキャパシティをはるかに越え、慢性的な渋滞に苦しんでいる。当初言っていたらしい通行料の無料化など、もう誰も信じていない。決して安くない通行料を支払って渋滞に突っ込んで行かざるを得ない状況は何故生まれたのか。
 東京には過去に都市計画というものが存在した。首都が東京に移った明治時代から、増え続ける東京の都市人口を捌くためには、住宅、交通の整備が欠かせない、というのがその理由だ。無秩序な開発は後々問題になってくるため、体系的に考えられたとおりに都市図面を引くのが目的だった。つまり、大雑把に言って、現在の道路交通網は、そのころに考えられたものが基になっている。しかし、計画された交通網は、現在でも未完成だといわれる。完成しないうちに首都高速の計画が進められていった。都市部では海運を捨て、トラック輸送の陸運に切り替わった。いよいよ政策として車主体の時代が幕を開けたのだ。
 明治時代当時は首都高速の計画など勿論存在しなかった。東京は大半が埋め立て地だった地の利を生かして運河が張り巡らされており、海運業が盛んだった。その世界でも有数の「水の都」東京は、戦後のドサクサで時の都知事によりゴミで埋め立てられたり、首都高速で覆われ暗渠同然の扱いを受けている。時代がそうさせたと嘯いてはならない。現代日本人がそう指向し、実際に作り直したのである。
 筆者の生まれた時には首都高速はすでに存在したため、何の違和感も無く過ごしてきた。しかし、明治生まれの世代が目指した東京像は果たしてこのような姿だったのだろうか。明治を生きた人は、もう日本にはほとんど居ない。東京は「東洋のベニス」にはなれなかった。

 ペンタックスLXは、発売から約20年たった現在でもペンタックスのフラッグシップ機である。こんな金属ボディのMFカメラに筆者は惹かれる。バルブと高速側のシャッターはメカニカル制御なので、電池が無くなっても動かなくなることはない。これこそ「プロ仕様」と言いたい。この設計思想を越えられるカメラを考えられないからか、LXの後継機をペンタックスは開発していない。しかし、それで良いのだと思う。是非、この最後の35mmプロカメラの保守体制だけは堅持していって欲しいと思う。
 パンケーキレンズの代表格と言えば、このM40mmF2.8と言えよう。発売された当時は、明るさのF2.8というスペックと、他のレンズよりも価格設定が安かったという事が嫌われ、余り売れなかった。売れなかったレンズがその後に人気集めるのはホロゴンと同じである。他にもGNニッコール45mmや、コニカやオリンパスの40mmも、パンケーキレンズとして人気が高い。
テッサーに一枚加えた5枚レンズのこの40mmは、糸巻き型の収差が残っているものの、バランスのとれた良い描写をする。画角の40mmも丁度よく、筆者の「標準」レンズである。

PENTAX LX SMC-PENTAX M40mmF2.8

M40mm

 中古カメラで購入した最初がこのLXである。今はやっていないオプションのカラーダイヤルが付いていた。高輪で7万円程度だったと思う。当時はまだ明治学院前を高輪消防署方面に曲がった所にあった古いビルで営業していた。カメラ屋らしい暗くて湿っぽい雰囲気を今でも覚えている。店の営業形態からして、今思えばたまたま在庫していたきれいなLXだった。カメラを即金で5万円以上全額支払ったのは、これが最初で最後であった。ヘキサーとともに新婚旅行をお供してくれたのはこのカメラである。一生手放すことはないだろう。
LX用に、と新宿アルプス堂で買った最初のレンズがM50mmF1.4で、小さいながらもよく写ったが、筆者の手荒い扱いでヘリコイドが渋くなってしまったため、売ってしまった。
M40mmF2.8は、アメリカから輸入した。確か2万円程と、東京で買う半額だった。ピントリングの薄さに使いづらさを感じないこともないが、長所は短所を覆い隠してしまうものだ。このレンズを見てしまうと、どんなコンパクトなレンズでも大きく感じてしまう。
ワインダーはMX用のものが壊れたので購入した。ちょっと大柄になり重くなるが、縦位置に構えたときグリップのようになり、便利だ。

1999年1月12日記

2016-03-10 | Posted in 甘露PHOTO日記Comments Closed 

関連記事