2005年2月すずらん通り KODAK SIGNET35 EKTAR44mmF3.5


2502signet

神田小川町にある東京古書会館では毎日古書の交換会が開かれている。2月のある金曜日、市会で一通り入札してから昼飯を食べに出た。普段店で仕事をしているとなかなか外で食べることがないため、こういう機会を捉えて外食するのは愉しみになっていたりする。
もともと筆者は学校を卒業してから4年間は神保町にある古書店で働いていた。当然昼飯は毎日この界隈のお店で食べていたわけで、いくつかお気に入りのお店も出来ていた。白山通り 沿いで働いていた為、天丼やとんかつ、天ぷら定食を出す有名なお店にはよく通った。カレーが好きで裏通りにあるカレー屋さんや靖国通り沿いにあるスマトラカレーのお店にもよく並んだ。ここすずらん通りにも今も昼飯時になると大行列ができるような店がいくつもある。カツカレーで有名な洋食屋さんはこの通りにある。この日もカツカレーを目当てにすずらん通りを急いだ。

筆者の親父は筆者が生まれた頃からこの東京古書会館で二ヶ月に一度開かれる古書展に参加していた。小学生だった頃、古書展の片付けを手伝うという理由でお茶の水駅から駿河台下の交差点まで歩いたことがあった。半蔵門線は そのころ開通していなかった。まだ若くてバリバリ働いていた頃の親父の姿はほとんど覚えていないが、夕闇のなかアーケードの灯りのまたたくすずらん通りのキラキラとしたイメージはなぜか忘れない。まだ時間が 少し早かったのをいいことにまるで吸い寄せられるように交差点を渡り、アーケードを歩ききったことを記憶している。寒い時期だったためか、見る店見る店がとても魅力的だったからか、子供心に一軒一軒入ってみたい気持ちだった。そんなこの通りの魅力を演出していたアーケードは筆者が神保町へ通いだす前に撤去され今は無い。

自分では時間をずらして行ったはずだったがお目当ての洋食屋さんは残念ながら大行列で、仕方なくカツカレーをあきらめて別のお店へと気持ちを切り替えた。白山通りにある洋食屋さん。メンチカツとしょうが焼きの盛り合わせ定食を注文した。ここのしょうが焼きは隠し味にケチャップが入っている、と少し前神保町を特集したTVで見た。4年間も毎週のように通っていたがその頃はまったく気付かなかった。

KODAK SIGNET35 EKTAR44mmF3.5

2502signet35

このカメラを買った頃、巷はクラシックカメラの大ブーム中だった。おおよそ半年に一度東京の百貨店で開催されるクラシックカメラ市に筆者も足繁く通っていた。今振り返ると、カメラの発達がAF一眼レフの機能面に集中し、多機能化・肥大化が進行していた時期だった。どのカメラも素人目には似たような形、似たような機能に見えるようになり、むしろクラシックカメラの”スタイル”に目新しさが感じられたのではないかと思う。
レンズの描写力が高い、という評判を聞き、そのシンメトリックなかわいいデザインとともにシグネット35は魅力的に見えた。金属製であることが当たり前の時代に作られたカメラは手に持った瞬間にハッとさせられる。世界最小・最軽量が売りの最近のカメラに慣れてしまった手には、この頃のカメラをずっしりと重く感じるのだろう。
露出もシャッターも巻き上げもすべてオートで撮影できるのが現代の常識なら、当時露出は入射光式露出計で測るのが当たり前だったし、シャッターは自分でチャージするのが普及機の必然で、フィルム巻き上げはオートどころかノブ巻上げ式でもおかしくなかった。かの高級機バルナック型ライカはシャッターチャージがフィルム巻上げと連動していたが、それ以外はこのカメラと機能的にはほとんど変わりがなかった。なんでもほいほいとやってくれるカメラも確かに便利だが、気持ちに余裕のあるときくらい、まるで自分の思っていることを聞いてくれるようなカメラと一緒に散歩することだって楽しい。

2005年2月19日記

2016-02-05 | Posted in 甘露PHOTO日記Comments Closed 

関連記事