電車の中で


前金の荷造り、発送を終えてから市場へ向かう。

自由が丘で急行に乗り換え、渋谷を急ぐ。すでに時間は13時15分。明らかに資料会に遅刻だ。心はあせったが電車はあせってはいけない。間に合わないなら間に合わないとあきらめ、少し気持ちをゆったり持つ事にした。

学芸大学駅でドアが開く。すると、ドアの前で待っていた女の子が乗車してきた。スラリと背の高い茶髪の子だった。彼女の胸の位置で大事そうに両手で抱えられている本が目に入った。黄色いカバーに見覚えがある。!ん!あれは「石神井書林日録」じゃないか!電車が動き出す。彼女は少し混んだ車内で本を広げた。ガタンガタンと電車が揺れるたびにページを繰った。ついまじまじとそのお顔を見てしまった。こんな変態オヤジに見られているなんて全く気付くことなく、彼女は石神井さんの描き出す本の世界に浸っていた。そんな様子を見ていたら本を持たずに飛び出してきた自分が恥ずかしくなった。彼女は渋谷で降りて行った。なんともいえない余韻が残った。

市場に到着して間に合わず。数点入札するも難しそう(^^;。月曜日に売れた本の代金を受け取り、すぐに帰路についた。

帰りの電車はすいていた。本を持ってこなかった事を後悔していると、少し甲高い声をした還暦くらいの女性二人の会話が聞かずとも耳に入ってきた。「アナタの人生で一番良かったって思い出せる時期っていつごろかしら?」「そうね、やっぱり女学生だったころかしらね。就職決まった事がすごくうれしかったのを覚えてるわ。」「結婚してからは?」「そりゃ最初はいいものよ。でもやっぱり結婚って現実なのよね。毎日毎日ご飯を作って・・・」「オトコの人は外に出て仕事しているからまだイイわよね。」「でも外で仕事をしてる人って退職してからが長いから・・・」「そうね、仕事が終わってからが大変よね。地位も名誉も関係なくなっちゃうから。」
ガラガラの車内で揺られながら、会話がこんな感じで延々と続く・・・。

「地位も名誉も」というクダリに話が流れていったときには一人の男としてちょっとメゲた(^^;。やっぱり男は女の人には勝てないね、絶対に。どう考えても生活本能は女の人の方が勝っている。男の方が”エライ”と、もし言えるとしたら、それは女の人から信認を得てはじめて許される言葉ではないだろうか。女の人に支えてもらってやっと男は立ち上がれるのだ。

東横線車内風景二題。

2002-01-23 | Posted in 甘露日記Comments Closed 

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